登山

駒ヶ岳八合目から千沼ヶ原・乳頭山縦走

投稿日:1997 年 8 月 14 日 更新日:

■コースタイム
駒ヶ岳八合目=0:55=湯森山=1:10=笊森山=0:30=千沼ヶ原=0:35=笊森山分岐=0:30=乳頭山=0:40=田代岱=1:00=孫六温泉=0:10=乳頭温泉バス停【total 5:30】

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 東北地方に停滞する前線の影響で、来てからずっと雨ばかり。おかげで予定していた八甲田山と毛せん峠越えはキャンセルになってしまった。5日目にしてようやく朝から青空が広がり、メインの千沼ヶ原へ行くことができた。田沢湖畔8時35分発のバスに乗り、9時30分頃駒ヶ岳八合目に到着。11年ぶりに訪れる駒ヶ岳八合目だ。駐車場は以前よりずいぶん立派になっていて、人も多い。前に来たときはバスの本数はずっと少なかったし、人もほとんどいなかった。それだけ訪れる人が増えたということだろう。早朝はよく晴れていたのだが、バスに乗った頃からガスが広がり出し、今日も快晴は望めそうにない。秋田駒ヶ岳の山頂が隠れたり現れたりしている。

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駒ヶ岳八合目より秋田駒ヶ岳を望む

 今回のコースは長いので、秋田駒ヶ岳から縦走しているととても時間がなさそうだ。それでショートカットして直接湯森山へ登るコースをとることにする。秋田駒ヶ岳は前に登ったので山頂は踏まなくてよいだろう。9時40分に道を確認して出発する。「笹森山1.2km」と書かれた立派な道標があるので迷うことはない。ほとんどの人は秋田駒ヶ岳へ登るので、この道に入る人は誰もいない。最初は少し下りとなり、飛び石伝いに沢を渡る。このあたりには名残のニッコウキスゲもちらほらと咲いている。滑りやすくて歩きにくい道をしばらく我慢すると快適な木道となる。この辺からは紫色のギボウシが目立つようになる。すでに実になったニッコウキスゲが大変多く、最盛期の頃はさぞかしきれいであろう。斜面をだらだらと登っていくと道標があり、笹森山の肩に着く。山頂まではわずかの距離だが、ピークには寄らなかった。このあたりからは向かい側の横岳から湯森山へ続くなだらかな稜線が雄大だ。ちょうどこの辺で初めて人とすれ違った。笹森山の山腹をトラバースする道は田沢湖高原国民休暇村へ下る道だ。右の道をとり、湯森山をめざす。少し下って登り返すが、笹藪が非常に深く苦労させられる。足下がよく見えないので、注意深く下を見ていないと急に穴があいていたりして怖い。ミツバチはアザミの花が好きなのか、そのまわりをブンブン飛び回っているが、滅多に人を刺さないので気にせず突っ切っていく。やがてハイマツ帯となって湯森山山頂に着く。山頂には大きな案内板があり、どこが頂上だかわからないようななだらかな山だ。秋田駒ヶ岳方面の展望がよい。5分ほど休憩していると、家族連れ4人が同じコースを登ってきた。

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ギボウシ

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湯森山山頂

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熊見平

 湯森山からはまた笹藪の中を分けて鞍部の熊見平へと下っていく。途中、ロープが渡されている箇所があったりして結構気を使う。昨日までの雨で道がぬかるんでおり、ずいぶん苦労させられた。やっとのことで熊見平の湿原へ下りて、木道の敷かれた快適な道となる。なかなかいい感じの湿原で、ちょうどガスがかかってきて幻想的な雰囲気だ。木道はしばらくの間続いて気分よく歩くことができる。やがて木道が途切れ、道は登りに転ずる。また笹藪が深くて歩きにくいが、大きな岩を回り込んでハイマツ帯に飛び出すと石のガラガラした道となり、登りやすくなる。正面には笊森山の頂上までほぼ直線的に道が続いているのがよく見える。笊森山はその名の通りザルを伏せたようななだらかな山である。勾配はさほどきつくはないのだが、どうもこういう山はなかなか頂上が見えてこないので精神的につらいものがある。一見頂上かと思う場所に出たが、またそのはるか上に道が続いていてがっかりさせられた。相変わらずのダラダラ坂をさらに10分ほど登っていくとようやく笊森山の山頂に着いた。山頂では何人かが休憩している。展望は大変よく、秋田駒ヶ岳の雄大な姿がかなり遠くに見える。また少し見下ろすようにして乳頭山が間近に見える。そして鏡のように光る千沼ヶ原の池塘群がついに姿を現した。笊森山付近は青紫色のミヤマリンドウが多く、写真を撮る。山頂で15分ほど休憩していよいよ千沼ヶ原へ向かう。

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笊森山付近

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笊森山より乳頭山を望む

 「千沼ヶ原0.5km」の道標を見て右の道をとる。途中から傾斜した木道が現れるが、朽ちかけていて不安げである。木道が終わるとまたぬかるんだ道となり、わずかの距離なのに非常に苦労させられる。やっとのことで千沼ヶ原の入口に着いた頃にはすっかり深い霧に覆われていた。湿原には木道が敷かれ、両側に無数の池塘が散らばっている。植物は紫色のギボウシが目立ち、すでに実をつけているコバイケイソウも多い。視界はきかないが、霧に包まれた湿原もまた幻想的な雰囲気で素晴らしい。休憩している人もちらほら見られる。ここはどこから来ても3時間ほど歩かなければたどり着けない秘境である。俗化した観光地などとは違って、まさに夢の楽園と謳われた雰囲気そのもので、ここへ来るために来たのだという実感が湧く。湿原は二つに分かれていて、手前の湿原が終わるといったんアオモリトドマツの樹林帯に入り、再び奥の湿原に飛び出す。規模はこちらの方が大きいようだが、濃いガスに覆われて視界は50mほどしかきかない。晴れていれば正面に岩手山が見えるはずなのだが、この天気では望めそうにない。これ以上進んでも何も見えないので、ここで軽い昼食をとり引き返すことにする。ゆっくりしていきたいところだが、後の行程を考えているとそうのんびりもしていられないので13時5分にさっさと出発する。

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千沼ヶ原

 手前の湿原に戻った頃にはすっかりガスは晴れていて、薄日が差し込んでいた。ほんのわずかの距離なのにこれほど違うものかと思う。今度は遠くの方のアオモリトドマツの樹林がよく見えるようになったので、また池塘群を入れて写真を撮る。八幡平をはじめ、アオモリトドマツに囲まれた東北の湿原は本当に素晴らしい。「乳頭山1.5km」の道標を見て今度は分岐を右にとる。木道が途切れるとまたグショグショのぬかるみの連続である。その上大きく沢が崩れている箇所があって、そこを渡るのに苦労させられた。このあたりには何本も沢があり、水量豊富な水場となっている。幾度も細かいアップダウンを繰り返して沢を何本か渡ると、笊森山から直接下ってくる道と合流する。ここまでわずか500mほどの距離だが、約35分を要するかなり歩きにくい道であった。ここに乳頭山まで1kmの道標があるが、とてもそんな距離には見えないほどまだ遠くにそびえている。しかしここからは展望の良い稜線歩きとなり、最も快適に歩ける部分ではないだろうか。この辺ではツリガネニンジンが多く見られ、ウスユキソウやハクサンフウロも見られた。途中、左下に不思議な形をした池塘群が小じんまりと散らばっているのが見える。遠くから見ると山頂まで相当な標高差があるように見えたが、近づくにつれて低く見えてくるのが不思議だ。山頂の絶壁の上に人が立っているのが見える。いよいよ赤茶けた砂礫地を登り、乳頭山の肩に取り付く。頂上までまもなくだ。かなりの急登だが、頂上が見えているだけに足が進む。やっと山頂に着いたときには相当息が上がっていた。

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ツリガネニンジン

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ウスユキソウ

 乳頭山の山頂は乳頭温泉方面から来た人も合わせてかなりにぎわっていた。それにしてもここの展望は素晴らしい。突出した岩頭であるため視界をさえぎるものは何もなく、まさに360度のパノラマだ。展望の素晴らしさでは秋田駒ヶ岳をもしのぐであろう。遠くには田沢湖の湖面が白く光り、その左手に秋田駒ヶ岳。そして笹森山、湯森山から笊森山と、歩いてきた全ての山の稜線が見える。振り返れば歩いてきた道のりの遠さに感動する。岩手山や八幡平はガスっていて見えないのが残念だが、まずまずの展望だ。北西の方向はるか彼方に形の良い高い山が見えるが、あれは岩木山だろうか。ちょっとそこまでは見えないようにも思えるので森吉山かもしれない。乳頭山の南側斜面は断崖絶壁になっていて、下をのぞき込むと吸い込まれそうで怖い。

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乳頭山山頂と笊森山

 20分ほど休憩して14時30分に山頂をあとにする。急坂を少し下ると、黒湯方面と田代岱方面との分岐点に出る。黒湯方面の道は木道が敷かれていて快適そうだが、ここは田代岱経由で下ることにする。しかし右の道に入ったとたん、またグショグショのぬかるみ道となった。雨の後はこんなものだろうともうあきらめの境地に入っている。とにかく非常に道が悪い。いつまでたってもまともな道にならないのでうんざりする。やがて田代岱山荘が見えてくるが、すぐ近くに見えているのになかなか近づけないのがもどかしい。やっとの思いで山荘にたどり着いた。コースタイムより10分短いと喜んでいたが、実は田代岱の分岐はまだ先であった。結局、田代岱の分岐にはコースタイム通り40分で到着した。

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田代岱より乳頭山を望む

 この時点で15時10分であったが、乳頭温泉16時29分発のバスにどうしても乗らなければならないので、孫六温泉まで1時間で下らなければならない。地図のコースタイムでは下り40分となっているが、このコンディションで果たして間に合うのだろうか。予想通り木道が途切れたとたんにグショグショのぬかるみになり、倒木も多くて最悪の状態である。滑らないように木の枝などをつかみながら慎重に下る。しかし行けども行けどもぬかるみは終わらない。なかなか先へ進めないのに時間だけがどんどん過ぎていく。これでは1時間かかっても無理ではないかという考えがよぎり、泣きたい気分になってきた。そうこうしているといつのまにか下ってきた単独の男性に抜かれた。下りの速い人がうらやましくなる。そして難渋の末にようやくぬかるみ地帯を突破し、まともな道となった。ここからはもう時間との戦いで、飛ばしに飛ばして下る。途中で休憩していたさっきの男性を再び抜いてしまった。16時になってもまだ温泉に出る気配はない。半分あきらめながらもさらに急いで下る。そして川の音が大きくなってきた。それは温泉が近づいたことを意味する。16 時5分を過ぎて、ついに乳頭温泉郷の建物が見えてきた。何とも言えない安堵感に包まれ、16時10分ようやく孫六温泉に転がり込んだ。ここから乳頭温泉のバス停まではよく整備された山道を急ぎ足で歩いて10分ほどだ。何とか発車10分前にバス停にたどり着いた。この日は田沢湖YHに宿泊する。

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孫六温泉

 最後は非常に急ぎ足になってしまったが、これも山と高原地図のコースタイムを鵜呑みにしていたのが間違いだった。田代岱から孫六温泉までの下りは40分となっているが、飛ばしに飛ばして1時間もかかった。いくら道の状態が悪かったとはいえ、40分というのは走らない限り絶対に不可能である。他にも駒ヶ岳八合目から湯森山までの上りが40分となっているが、これもかなり厳しくて実際はもっとかかる。こういういい加減な表記は改めてもらいたいものである。11年ぶりに訪れた秋田駒ヶ岳だが、高山植物の咲き乱れるこの山域がとても気に入った。

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