小赤沢三合目より苗場山

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登山

■コースタイム
三合目=0:25=四合目=0:20=五合目=0:30=六合目=0:15=七合目=0:15=八合目=0:20=和山分岐=0:50=苗場山=0:40=和山分岐=1:10=五合目=0:45=三合目【total 5:30】


 朝6時頃、清津峡温泉YHを出発し、津南町から国道405号線に入る。初めは道幅も広いが、逆巻温泉を過ぎる頃から一車線の険しい道になってくる。この頃はまだ青空も広がっていた。前倉橋で一旦谷を渡り、大赤沢の集落を抜けて次の小赤沢の集落で左折し、林道に入る。思ったより整備された道でちゃんと舗装されている。上ノ原からの道と合流するとダートになるが、路面は比較的フラットで走りやすい。途中からまた舗装に変わる。これといった難もなく、あっけなく三合目の駐車場に着いた。結構広いスペースがあって、立派なトイレまで設置されている。まだ車もまばらで十数台といったところだが、8時を過ぎる頃にはここもいっぱいになってしまうであろう。

 午前7時35分に登山を開始する。駐車場の奥から登山道に入るとすぐ三合目の標識があって、四合目まで30分と書かれている。道はすぐ尾根上に出て、針葉樹林帯の中を登っていく。25分ほどで四合目の標識に着いた。すぐ右へ下ったところに小さな沢があり、数少ない水場となっている。しかし水量が少なく、水は汲みにくい。そこから少々湿っぽい感じの道をさらに20分ほど登ると五合目の標識に着く。六合目まで25分と書いてある。道は次第に尾根の地形を失い、急な斜面を登っていく。一旦開けたような場所に出るが、六合目はまだだ。そこにも水場があって、パイプを通して少量の水が湧き出している。ここが最後の水場となるので一応補給しておく。小休止してまた登り始めるが、なかなか六合目に着かない。急なジグザグ上りを何度かこなすとやっと六合目の標識があった。これはどう考えても25分はきつい。この間が最も長く、30分はかかった。次は七合目まで15分と書かれている。休憩をとらず、一気に行ってしまおう。ここから登りはさらにきつくなるが、七合目までは意外と短く感じた。きっちり15分で到着。次の八合目までは20分と書かれている。ここからいよいよ胸突き八丁、非常に険しい登りとなる。ところどころに鎖が張られており、岩をつかみながらよじ登るという感じが強い。黙々と岩場を登り続けること約15分で八合目の標識に着いた。ここはきつい坂の途中にあり、ちょっと休むのもはばかられる場所である。八合目を過ぎてもまだ岩場の登りが続くが、5分ほど登ると岩場が終わって笹原が広がってくる。その上にもう木は見えない。いよいよ頂上に出そうな気配で期待が高まる。笹原の中を真っ直ぐに登っていくと、突然広大な湿原に飛び出した。実に感動的な出会いである。この瞬間、あの苦しかった登りも忘れるほど至福の時が訪れる。

 湿原に出てすぐの所に休憩所があるので小休止する。湿原の中は木道が敷かれ、先ほどまでの苦しい登りとは打って変わって足取りも軽い。これほど劇的な変化があるだろうか。ただ残念なのは天気が悪く、山の展望が全く望めないことだ。早朝は晴れていたが次第に雲が多くなり、時々濃いガスに覆われるようになった。しかしたとえ展望がなくてもこの湿原を歩けるだけで十分価値のある山である。霧に包まれた池塘もまた幻想的で美しい。約10分で和山方面との分岐に着く。このあたり池塘が多く、ほんの一瞬だけ晴れ間が差した。すでに実をつけたチングルマの大群落が見られる。そして分岐からあと5分ほどで九合目の標識があるが、気を付けてないと見落としてしまうほど見つけにくい。


和山分岐


九合目付近

 九合目を過ぎると一旦湿原が終わり、再び樹林帯の中に入る。ここは木の根が張り出して非常に歩きづらい。大きな岩も多くてなかなか苦労させられる。そう簡単には山頂にたどり着かせてくれないようだ。やっとのことで樹林帯を抜けると第二の湿原とも言うべき山頂湿原に飛び出す。最初の湿原よりはるかにスケールが大きい。遠くに池塘群を眺めながら、ワタスゲの咲き乱れる緩やかなスロープを登っていく。行き交う人も多い。ここまで来れば山頂までもう一息だ。そしていよいよ前方に苗場山頂ヒュッテが見えてくる。ずいぶん立派な建物である。ヒュッテを越えて斜面をもうひと登りすると黒っぽい建物の遊仙閣に着く。そしてこのすぐ横が苗場山の三角点だ。午前10時35分の到着であった。一応ここが山頂であるが、三角点があるだけで樹木に覆われ展望は全くない。これといった感慨もないので証拠写真だけ撮ってすぐ立ち去る。


苗場山頂ヒュッテ


苗場山頂

 そして湿原の方へ移動して、木道の傍らに作られた休憩所で昼食をとる。ここもたくさんの人で賑わっている。目の前に大湿原が広がる絶好のロケーションだ。それからもう少し奥の方へ足を延ばして写真を撮る。このあたりワタスゲが満開で真っ白になっている。しかし見る見る間に濃いガスに覆われてしまい、ついに雨がポツリポツリと降り始めた。幸い雨はすぐに止んでまたガスも晴れていったのだが、空模様が怪しそうである。あまり長居しているわけにもいかないので、11時50分にこの幻想的な風景に別れを告げる。


咲き乱れるワタスゲ

 山頂を離れてもまだずっと湿原の中で、下りも楽しい。また写真を撮りながら歩くが、やはり時々雨が落ちてきて、つい急いでしまう。そしてまたあの樹林帯の中に突入。登り以上に長く感じられた。再び第一の湿原に出て、帰りに撮ろうと思っていたポイントで写真を撮るが、やはり行きと同じように天気は変わり映えがしない。そして後ろ髪引かれる思いで湿原に別れを告げて長い長い下りへ入っていく。


第一の湿原

 八合目から七合目にかけてはよくこんなところを登ったものだと思えるほどきつい下りであった。やっぱり下りの方がずっと歩きにくい。そしてポツポツと降っていた雨が次第に草に当たってザーと音を立てるほど本格的になり、六合目を過ぎる頃には本降りになってしまった。それまでは木のおかげでそんなに濡れなかったので雨具を着ずに歩いていたが、そろそろ木の下でも雨が落ちてくるほどひどくなった。周りが雨具を着出したのでここでついに雨具を着ることになる。ところがどういうわけか雨具を着ると止むというのが山のジンクスである。5分もすると雨は小降りになり、むしろ中から蒸れる方が不快になってしまった。五合目に着く頃にはほとんど雨も上がり、わずらわしい雨具を脱ぐ。やっぱり夏の雨は雨具を着るより濡れた方が気持ちいい。これから先、さらにぬかるんで歩きにくくなってしまったが、もう大したところはない。幸い雨も止み、淡々と歩くこと45分で三合目の駐車場に着いた。14時 35分下山、出発してからちょうど7時間が経っている。もう車はだいぶ少なくなっている。天気が悪く、雨にまで降られてしまったが、あの湿原を見られただけで十分な満足感があった。この山にまた登るのはいつのことだろうか。

片雲の風に誘われて