酸ヶ湯温泉から八甲田大岳・毛無岱

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登山

■コースタイム
酸ヶ湯温泉=1:10=仙人岱ヒュッテ=0:45=大岳=0:15=大岳避難小屋=0:40=毛無岱=1:15=酸ヶ湯温泉【total 4:05】

コースマップ


 これまで二度計画していずれも雨のため断念した八甲田登山。八甲田に来るといつも天気に恵まれないのだ。今回もまだ梅雨明けしていないとあってほぼ絶望的と思われたが、この日は梅雨の晴れ間が広がり、降水確率も10パーセント以下であった。これは絶好のチャンスとばかり、急遽八甲田登山を思い立った。前日宿泊した雲谷高原YHを8時過ぎに出発し、9時前に酸ヶ湯温泉に到着。予想通りというか、今日は日曜日とあって駐車場はほぼ満車で、あと少し遅かったら置けないところだった。さすがに日本百名山とあってものすごい人気である。

 準備を整えて9時10分に酸ヶ湯温泉を出発する。鳥居の横から登山道に入ると熊笹の茂るかなりぬかるんだ道がずっと続く。勾配は割合ゆるやかで一定しているため登りやすい。先行のグループを何度も追い抜いたかと思えば、後ろから来た単独の中年男性に追い抜かれることもあった。かなり山慣れている雰囲気である。樹林の中で全く展望もない道を淡々と登ること約30分で樹林が途切れ、南八甲田連峰の展望が開ける場所に出る。ここから先、ガレた斜面の中を登っていく道が見える。少し登れば硫黄の臭いが鼻をつく。そしてこのあたりからハクサンチドリ等の高山植物が見られるようになる。ガレた斜面は階段になっていて、勾配もかなりきつくなってくる。さらに30分ほど頑張ると正面に小岳が見えてきて木道となる。間もなく仙人岱ヒュッテ前に着く。ここには水場があって5分休憩。左手に大岳があるはずだが、頂上はガスに隠れて見えない。


仙人岱より小岳を望む


イワイチョウ

 ここからはさらに急な登りとなり、ペースも落ちてくる。かなりガスが濃くなってきて、薄暗くなった。風もかなり強い。しかし、ハクサンチドリ・チングルマ・イワイチョウ・コバイケイソウ・イワカガミなどの高山植物が多く、目を楽しませてくれる。多くの人が立ち止まってカメラを向けていた。熊笹の中を抜けるとハイマツなどの背の低い樹林帯となり、いよいよ山頂に向かって一気に登っていく。この辺りから猛烈に風が強くなってきて、帽子を飛ばされそうになる。また団体の登山客が狭い道の真ん中で休憩していて、はっきり言って迷惑である。強風と闘いながらあと10分ばかり登るとほどなく大岳の山頂にたどり着いた。時刻は11時10分。ようやく念願の山頂に立った喜びでいっぱいだった。


八甲田大岳山頂

 山頂は完全にガスに覆われていて展望はゼロ。わずかに東側の斜面が火口壁となって断崖状に切れ落ちているのがわかる程度である。さらに猛烈な強風でとても立っていられないほどである。それでも次々と人が登ってきて、さっきの団体客も到着すると山頂はにわかに雑踏と化した。山名板の前で記念写真の順番を待つ人が絶えない。この強風ではとても弁当を広げるような気分ではないので、団体客は早々に引き上げていった。にわかに静寂が戻る。一瞬ガスが晴れて日が射した瞬間もあったが、いくら待っても晴れそうにはないのでやはり早々に退散することにする。

 20分休憩して山頂を後にし、井戸岳との鞍部に向かって下り始める。ここもかなりの急坂である。するとまたさっきの団体客に追いついてペースを落とされる。先に行かせてもらったが、はっきり言ってこんな大人数で山に登るのは迷惑だ。小グループに分散するとかもうちょっと考慮してほしい。このあたりハクサンチドリの群落が多数見られる。岩が累々とする急斜面を転がり落ちるようにして約15分で大岳避難小屋に着く。ここはかなり立派な小屋で、強風を避けて弁当を広げている人が多い。だがここで弁当を食べているとまたさっきの団体に追いつかれてしまうので、先を急ぐことにする。


ハクサンチドリの群落

 ここから先はどういうわけかほとんど人に会わない。時間も遅いので逆に登ってくる人は少ないということだろうか。やはり熊笹の多い単調な道を30分ほど下ると木道が現れて毛無岱の湿原に出る。ここは以前ロープウェイ経由で来たことがある。八甲田で最も気に入っている場所である。花はだいぶ終わりかけているが、キンコウカの黄色い花が目につく。ここまで下りてくると天気も良くなり、晴れ間が広がってきた。暖かい日差しが心地良い。広々とした湿原を歩くのはとても気持ちが良く、写真を撮りながら10分ほどで休憩所に着いた。ようやくここで昼食をとることにする。


上毛無岱

 約30分の大休止の後、湿原をさらに下へ向かう。振り返れば八甲田大岳は相変わらずガスの中である。


なかなか見えない八甲田大岳

 いったん木道が途切れ、また熊笹の中を下るようになると間もなく急な階段に出る。そしてここから無数の池塘を散りばめた大湿原を眼下に見渡す素晴らしい展望が開ける。ここから見る風景が一番好きだ。毛無岱は上下二段の高層湿原となっていて、便宜上この階段より上を上毛無岱、下を下毛無岱と呼んでいる。


下毛無岱を見下ろす

 階段を下り切るとまた木道が第二の湿原の中を貫いている。キンコウカの黄色い花がよく目立つ。


キンコウカ

 下毛無岱にも同じような休憩所が一ヶ所ある。この辺りまで来るとガスがだいぶ晴れてきて大岳の山頂がもう少しで見えそうな感じになるが、どうしても山頂のガスだけは取れない。一方、向かい側の南八甲田連峰はよく見えている。


下毛無岱と南八甲田連峰

 湿原を抜けると再び樹林帯の下りとなり、少々湿っぽい感じの道となる。あとは酸ヶ湯温泉まで1キロあまり、淡々と下るだけだ。酸ヶ湯に出る直前、非常に美しいブナの純林の中を通る。午後の陽を受けて白っぽい幹が美しく輝いていた。午後2時10分、酸ヶ湯温泉に到着。温泉に入っていきたいところだが、団体客で混雑しているのでパス。その後、3時頃に睡蓮沼に到着すると大岳山頂のガスがようやく取れて初めて姿を現した。さっきまであそこに登っていたのだという感慨に浸る。今回は残念ながら山頂からの展望は得られなかったが、13年来の念願が叶ったことを素直に喜びたい。


美しいブナの純林

片雲の風に誘われて