1994.6.4 紀伊半島ツーリング(2日目)

スポンサーリンク
自転車

実走日:1994年6月4日(土)
コース:川湯温泉~熊野川町~新宮~那智勝浦~串本~潮岬

 今日も朝から雲一つない快晴だ。午前8時15分に河鹿荘YHを出発する。露天風呂のある大塔川に沿って走り、請川で国道168号線に合流して新宮方面に向かう。国道168号線は新宮までずっと熊野川に沿って走る。5kmほど走ったところで同宿のライダーが追い越しざまにクラクションを鳴らしてVサインを送ってくれた。

 熊野川は白い石が敷き詰められた広い河原を持つすばらしい川である。美しいカーブを描きながら蛇行する風景はまるで四国の四万十川を思わせる。日足の橋のそばには少し時季はずれだが鯉のぼりの川渡しがあった。美しい川を眺めながらどんどん川を下って行く。この道は川沿いながらアップダウンが結構多い。南檜杖を過ぎたところで最後のトンネルを抜け、国道42号線に出る。ついに紀伊半島を横断して熊野灘まで来たのだという実感が湧く。

広大な熊野川

 国道42号線に入って進路を南にとる。新宮市街の国道42号線は4車線で交通量が多い。ここからしばらくの間だらだらした長い上り坂が続く。先が見えているだけにうんざりする。やっと道が下りになると海が見えて三輪崎に着く。しかし海岸線特有の潮風がかなり強く、ここからずっと向かい風に苦しめられることになる。

 宇久井を過ぎるとトンネルが2つ断続するが、ここは左側に車の通れない旧道のトンネルがあり、こちらを通るのが面白い。2つめのトンネルを抜けると赤色海岸と呼ばれる海岸に出て海の眺めがよい。この辺でロードレーサーとすれ違いVサインを交わす。那智駅前のバス停でしばらく休憩するが、今日はとても暑くてここでボトルの水が切れてしまった。まだまだ時間が早いのでちょっと寄り道して勝浦漁港を見に行く。紀伊勝浦駅前のにぎやかな商店街を抜けてすぐ港に出る。港には漁船がひしめき合って停泊しており、漁港特有の匂いがする。町には海産物の店が並び、活気に満ちている。港の向こう側には紀ノ松島の景勝が眺められ、勝浦温泉の豪華なホテルが立ち並ぶ。地図によると海岸を回って湯川に抜けられそうな道があるので行ってみたが、途中で行き止まりになっており、しかたなく引き返して国道42号線に戻る。

 勝浦を過ぎるとかなり交通量が減って走りやすくなる。湯川隧道は歩道専用のトンネルがあるのでこちらを通る。出口付近で何か工事をしていて自転車を押して通る。やがて湯川駅前に出て再び上り坂となる。短いトンネルが断続し、おだやかな森浦湾の風景がよく眺められる。まだ時間があるので森浦の交差点で左折し、太地方面に寄り道してみる。鯨の博物館までの道はフェニックス並木が続き、南国ムード満点である。ちょうど正午なので防波堤の下で昼食にする。といってもカロリーメイトと缶ジュースだけの粗末な食事である。こんなものでもつのだろうか。それにしても喉が乾いているときに固形のカロリーメイトは非常に食べにくい。余計に喉が乾いてしまう。

 しばらくぼんやり景色を眺めて休憩した後、来た道を引き返して国道42号線に戻る。また上り坂となり、とにかく暑い。太地駅前の自動販売機でまたもやジュースを飲む。浦神の先で那智勝浦町と古座町との境まで上り坂になっており、ここを越えれば串本までもう上りはないはずだ。上りは思ったほどきつくなく、難なくピークに着いてほっと一息ついたそのとき後輪からシュシュシュッという音が・・・。

 いやな予感がして後ろを見てみるとやっぱり最も恐れていたパンクであった。別に段差に乗り上げたわけでもないのになぜこんなところでパンクしたのだろう。昨年山の中でパンクして痛い目に遭って以来、常にパンク修理セットを携帯しているがそれから一度もパンクしたことはない。したがってパンク修理は一度も練習したことがないので、うまくできるかどうか非常に不安である。実際、本でよく覚えたつもりでもいざとなるとなかなかできないものだ。まずタイヤを外すのがとっても大変。700×25Cのタイヤは非常に固く、タイヤレバーを2本使ってもとても自転車屋さんのようにはできない。思いっきり力を入れても少しずつしか外れない。

 ある程度外れると素手でも簡単に外れるようになり、ようやくチューブを引き出せた。パンク箇所は容易に判明。タイヤの方にも5mmくらいの亀裂ができており、ここからパンクしたようだ。予備チューブを持っているのでチューブごと交換する。一週間前に買ったばかりの予備チューブが早くも役に立ってしまった。宿に着いてからパンクしたチューブを修理したが、もし予備チューブを持っていなかったらもっと苦労していただろうと思い、予備チューブの必要性を痛感した。

 チューブをかまれないようにはめるのは割と簡単だったが、バルブ口のところだけがどうしてもかんでしまい非常に苦労した。こんなことをしていたら日が暮れてしまうのではないかという不安が頭をよぎる。試行錯誤の末ようやくコツをつかみ、あとはタイヤをはめるだけとなった。始めのうちは簡単にはまるが、最後の方がやはり非常に固くてなかなかはまらず気は焦る一方。タイヤレバーをテコにして力でねじ込み、ようやくタイヤが全部はまった。そして、チューブをかんでいないことを確認して空気を入れる。フレームポンプでも意外によく空気が入ることに驚いた。1時間ほど悪戦苦闘の末ようやく修理完了。まあ、やれば何とかなるものだ。これも経験だから仕方がない。

 おそるおそる走ってみるが何とかタイヤは大丈夫のようだ。時計を見ると2時30分。この分だとまだ余裕で着けそうだ。太陽の照りつける中、汗をかきながら修理していたのでますます喉が乾いてしまった。やっぱりボトルの水を切らしてしまうとよくない。自動販売機を探しながら走る。ようやく海沿いの休憩所で自動販売機を見つけ、ポカリスエットを飲んでやっと生き返る。古座町からはほとんど海岸ぎりぎりのところを走るシーサイドランを楽しめるが、相変わらず向かい風が強い。この風さえなかったら快適なのにと恨まれる。ペースはいっこうに上がらない。やがて大島の姿が間近に見えるようになり、観光名所の橋杭岩に着く。ここで写真を撮る。

橋杭岩

 橋杭岩を過ぎるとまもなく串本の市街に入り、またもやジュースを飲む。これでもう4本目だ。こんな甘いものばかり飲んでいたら体に悪いと思いながらも我慢できない。潮岬東入口の交差点から潮岬周遊路に入るとやっと向かい風がやんだ。しかしそれも束の間、今度は上りが待っている。はるか先まで見える長い上り坂をノロノロと上る。荷物さえなかったらどんなに楽かと思われる。そしてせっかく上ったのにまた海岸まで下ってしまう。でも宿まであと少し。今度こそ最後の上りで気力で上る。上り切ったところは広い草原状になっている。午後4時過ぎようやく今夜の宿みさきロッジYHに到着。ここは民宿も兼営しているが、ユースの宿泊者は一人だけ。一人だけのユースは寂しいものがあるが、まず風呂に入って汗を流す。とにかく今日は暑さと向かい風に苦しめられた一日だった。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
93.94km 4:26:21 21.2km/h 45.5km/h 60m
川湯温泉
60m
片雲の風に誘われて