1994.6.25 奥香肌峡めぐり

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自転車

実走日:1994年6月25日(土)
コース:森~波瀬~木梶~奥香肌湖~蓮~奥香肌湖~森

 奈良・三重県境の高見トンネルを越えて国道166号線をさらに松阪方面に向かうと、飯高町の森というところで蓮(はちす)ダムに向かう道と分かれる。ここには「もり公園」という小さな公園と駐車場があるのでここを出発点とする。ここが最も標高が低いからである。輪行の場合はアプローチが悪く、松阪駅から自走するかバスを利用するしかない。

 もり公園を出発し、国道166号線を西進する。道は櫛田川に沿ってゆるやかに上っていく。上り坂に加えて向かい風のためなかなかペースが上がらない。大した上りでもないのにずっとインナーで走ってしまう。しばらく走ると道は1車線となる。国道166号線は改良が進んでほぼ2車線となったが、ここだけが唯一残された1車線区間である。交通量はきわめて少なく、路面の状態も良い絶好のツーリングコースである。静かな山村の風景を楽しみながらのんびりと走ることができる。この辺でMTBとすれ違う。珍しくレーパン&ジャージ&ヘルメット&サングラスのバリバリスタイルである。こんなマイナーな道では自転車と遭うこと自体非常に珍しい。

 波瀬あたりまで来るとかなり勾配がきつくなってくる。高見峠への上りがすでに始まっているのだ。ここにはモダンな波瀬郵便局があり、波瀬植物園なるものもある。出発点から約10kmばかり走ったところで標識がなくややわかりにくいが、落方トンネルの手前で左斜めの道に入るのがポイントである。もう少し先の木梶トンネル手前には蓮ダムへの標識があるが、そこまで行くと無駄に上らされてしまう。下の道を通ればあまり上らなくて済むし、川沿いの気持ちいい道を走ることができる。この道を行けば自然に加杖坂峠への道に合流する。

 ここからは標高差200mを一気に上る急勾配の連続である。取付きからいきなり急坂が始まり、まもなく栃谷の集落を通過する。ここに休憩所があるので早くもひと休みする。この先はつづら折れを繰り返しながら、10%前後の急坂が続く非常に苦しい上りである。インナーローで6~8km/hの超スローペースで上る。途中3回くらい休むが、上ってきた道を見下ろすのはいつも楽しいものである。最後は勾配がゆるくなってまもなく峠のトンネルが見えてくる。トンネルの手前で写真など撮りながら休憩する。峠からは展望が開け、高見山から連なる台高山脈の稜線を間近に望むことができる。山腹を這い上がっていく国道166号線の赤い橋桁もチラリと見える。ここは標高600m、通る車もない静かな峠であり、峠を吹き抜ける風は実にさわやかである。

加杖坂トンネル

 加杖坂トンネルは、照明はないが260mと短いのでライトがなくても気にならない。一直線のトンネルの向こうから明かりがだんだん近づいてきて新しい風景が広がる。こういうトンネルは非常に気持ちがよい。峠の下りも急勾配で注意を要する。谷筋を30~40km/hで下り、間もなく青田に出る。集落らしきものはない。ここからは青田川に沿ってほぼ平坦に走る。やがて川幅がだんだん広くなり、蓮ダムによってつくられた奥香肌湖となる。梅雨時にもかかわらず水量が少なく、地肌が見えている。なお、この湖は最近できたもので新しい地図にしか載っていない。

奥香肌峡

 湖岸に沿って走るとやがて橋が見えてくる。標識もあり右に行けば蓮である。このまま蓮ダムまで行ってしまうと距離が短すぎるので、終点の蓮までピストンしてみることにする。標識にしたがって右折し、橋を渡る。トンネルを一つ抜けると急峻な山々に囲まれた湖が長々と続いているのがわかる。なかなか雄大な景観である。対岸にはうねうねとワインディングを繰り返す細い道が見える。あまり知られていないせいか、ほとんど人気がなく静かなのがいい。軽いアップダウンを繰り返しながら谷をさかのぼり、やがて橋が現れて対岸の道と合流する。ここからは完全な一本道となる。ここまで来るとダム湖はもう川となっている。横を流れる蓮川は大きな岩がゴロゴロした渓流となり、岩の間に咲くツツジがすばらしいアクセントを添えている。勾配もかなりきつくなってきて、やがて三軒屋で宮ノ谷林道と分岐する。宮ノ谷林道も行き止まり路線であり、わずか1.5kmほどしかない。そのまま狭い舗装路をさらに奥に進んで蓮の手前で河原に下りて昼食にする。水は本当にどこまでも透き通っている。

 しばらく休憩した後、再び谷を遡行する。終点まではもうすぐのはずだ。やがて道がダートに変わり、この先道路崩壊のため通行止めと書かれているのでここで引き返すことにする。ここが終点の蓮であるが、人家らしきものは全くない。想像していたよりもはるかに寂しいところであった。ただ廃校になった小学校がポツンとあるのを見ると昔は人が住んでいたのだろう。こんな山奥に学校があったこと自体驚きであるが、朽ち果てた木造の校舎を見るにつけなんとも寂しい限りである。ここはすでに台高山脈の懐に入っており、池木屋山への登山口となっている。釣り人と登山者以外訪れる人もなく、まさにちょっとした秘境という感じである。このような行き止まりの道を訪ねるのも意外な発見があってなかなか楽しいものだ。

 杉木立の中の気持ちの良い道を快調に下りながら、もと来た道を引き返す。帰りは橋を渡って右岸の道を走ってみるとまた変化が楽しめる。比較的直線的な左岸に比べて右岸の道は小刻みなカーブが多く、小さなアップダウンも多い。そのままずっと右岸に沿って走るとやがて赤錆びたアーチ橋を渡り、短いトンネルをくぐって蓮ダムの堰堤に出る。堰堤を渡れば対岸の広い2車線道路に出る。蓮ダム管理所の横には小高い展望台があり、時間があれば歩いて登ってみるとよい。ここには自動販売機もあり、ベンチに座ってしばらく休憩する。

 ダムを過ぎればあとはもう下るだけである。かなり勾配がきつく、2車線なので思いきりスピードが出せる。ここで最高速度62km/hを記録。坂を下り切ればあと2kmほどで出発点のもり公園に戻る。途中にはスーパーもある。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
43.39km 2:08:19 20.2km/h 62.0km/h 550m
加杖坂トンネル
330m
片雲の風に誘われて