1995.10.7 吉野・樺の木峠と地蔵峠

スポンサーリンク
自転車

実走日:1995年10月7日(土)
コース:善城~樺の木峠~十日市~長谷~長瀬~寺戸~才谷~善城

 最近週末ごとに雨が降るパターンが続いていて、なかなかツーリングに行けず、欲求不満がたまっている。今年は春からずっとこのパターンが変わらず、すっきりと晴れた週末は2回くらいしかなかったような気がする。特に9月以降は雨の降らなかった週末はない。おかげで今年の走行距離はまだ1000kmに達していない。天気予報によると今日は晴れ時々曇り、降水確率0%ということなので久々にツーリングに行けそうだ。しかし朝のうちは晴れていたものの、すぐ曇ってきてしまった。明日の日曜日はまた雨との予報である。今日は雨の心配はなさそうなので、今日中に行っておかなければまたいつ行けるかわからないであろう。

 また次の問題はコースである。近場のコースはほとんど行き尽くしてしまったので、日帰りで行ける範囲では未走のコースはほとんど残っていない。もちろん短い距離ならいくらでもコースはできるのだが、私のツーリングの定義では最低でも30kmは走らないとツーリングとは言えないのである。最近は新しいコースを開拓しようと思えば最低一泊はしないと不可能になってきた。奈良近辺で未走かつ面白そうなコースを探してみると、吉野の樺の木峠と芋ヶ峠くらいであった。どちらも車ではよく通っているのだが、自転車で越えたことはまだなかった。このうち樺の木峠は展望がよく、勾配がゆるやかなため、自転車で越えたら面白そうだと思っていた。特にこれからの季節は山の斜面に広がる柿の木が黄色い実をつけて大変風情がある。ここはやはり秋に限るということで樺の木峠に行くことにした。

 出発地点は下市町下市付近にしようと思ってそこまで車で行くが、例によって駐車場所が見つからない。しかたなくそのまま国道309号線を走って行くと、岩森というところにある町営下市温泉秋津荘の広い駐車場を見つけた。まだガラ空きなのでとりあえずここに置かせてもらうことにした。午前11時過ぎに自転車を組み立てて、来た道を下市方面に少し戻り、下市町役場のすぐ先から斜めに折り返す形で県道20号線に入る。

 役場を見下ろしながら高度を稼いでいくと、砂利採取場があり少々埃っぽい。最初はかなりの急勾配である。大きなカーブを2回曲がると、難なく五條方面から来る広い道と合流する。ここから先はもう急な上りはない。道は等高線に沿うような形で山の尾根付近をくねくねと上っていく。そのため非常に展望がよく、カーブを一つ曲がるたびに新しい展望が開ける。この辺り一帯は柿畑となっており、周りは柿の木ばかりである。ここから見下ろす五條方面の風景が何とも言えず素晴らしい。手前には黄色く色づき始めた柿の実、中程には山の中腹に広がる集落、そして遠くには金剛・葛城の山並みを望み、それらが一幅の絵になるような風景を作り出している。まさに大和路の秋を代表する風景だ。あまり知られていないが、ここはおすすめのスポットである。ところどころ止まりながら写真を撮るが、コンパクトカメラではどうも思うように収まらない。上栃原のバス停を過ぎるとまもなく樺の木峠に着く。あっけないほど簡単に上れる峠であった。峠にはバス停があり、そこで上りから下りに転ずる以外はあまりはっきりしない峠である。これは峠付近まで集落が広がっている地形の特徴であろう。しかし、この峠の名前の由来はよくわからない。

栃原より葛城山を望む

 峠を越えると平原、唐戸の集落を通り、かなり長いダウンヒルが続く。横を流れる川は紅葉川という。峠の反対側と違って川沿いだから当然展望はない。道は1車線幅であり、あまり飛ばしていると時々対向車が現れてヒヤッとすることがある。もともと接地抵抗などないに等しいロードレーサーでは急停止は絶対不可能である。おまけに前タイヤに比べて後タイヤが極端にすり減っていて、前ブレーキを強くかけ過ぎると後タイヤが滑って非常に危険なのである。これでこけそうになったことが何度あっただろうか。後タイヤは完全にパターンがなくなっているのでそろそろ替えなければいけないと思うのだが、まだ1000kmも走っていないのにあまりにも寿命が短いのではないだろうか。

 十日市で短いトンネルを抜け、黒滝の標識を見て左折する。ここからは丹生川に沿ってゆるやかに上っていく。樹林の中の大変静かな道である。ここは一度も来たことがないので初めて通る道である。本来ツーリングでは15km/hくらいでゆっくり走るのが適切だと思うのだが、トレーニングを兼ねているので上りにもかかわらず25km/h以上のハイペースで飛ばしてしまう。道が曲がりくねっているため、地図で見るよりはかなり距離感があり、貝原の集落に着くまでずいぶん長いように思う。また西山地区には「やすらぎの森」キャンプ場がある。さすがに夏のシーズンも過ぎて人はまばらだが、まだいくつかのテントが見える。キャンプ場からさらに3kmほどで国道309号線に出る。

 ここで地図を確かめず、標識には下市は左とあるので何となく左折した。川沿いの道を少しずつ上っていく。しかし八幡神社の少し先まで約1.5kmを走った地点で道を間違えたのではないかと思った。間違いに気づいたのは反対車線に「黒滝茶屋6.7km」の看板を見たのと、やけに上っているように思ったからである。早速地図を取り出して確かめてみると、やはり広橋峠に向かって上っていたのであった。もちろん、この道を通っても下市には戻れるのだが、それは目的のコースとは違う。本来のコースは黒滝から地蔵峠を越えて下市に戻るルートだ。間違いに気づくのが遅れた原因は、同じように横を川が流れていたからであろう。それにしても何の疑いもなく1.5kmも逆走していたとは何という間抜けなことをしているのだろうか。地図をウェストバッグやデイパックの中に入れていると、ついつい取り出すのが面倒になってしまうのであった。やはり要所要所では地図を確認する習慣をつけなければならない。

 長谷の郵便局前まで引き返して、国道309号線を黒滝方面に進むと、すぐ左手に丹生川上下社が現れる。吉野一帯に上社・中社・下社がある丹生川上神社の一つである。立派な構えの社で、看板には「日本最古・水の神様」とある。そこからさらに2kmほど先の寺戸方面への分岐点には道の駅・黒滝があり、昼食にする。

 道の駅で国道と別れて寺戸・赤滝方面への道に入る。ゆるい上りがさらに続く。御吉野では工事中の区間があり、すぐその前に真新しいウッディ調の建物「御吉野の湯」がある。御吉野を過ぎたところで寒くなってきたのでアームウォーマーをつける。その先の寺戸は黒滝村の中心であり、役場や学校がある。そこを過ぎれば2車線の立派な道となり、脇川では槙尾方面への分岐があるはずだが、それには全く気付かずに自然に地蔵トンネルへの上りにさしかかる。かつてはここから地蔵峠までさらに100mほど上らなければならなかったが、地蔵トンネルができてからはほんのわずかの上りだけで越えられるようになった。地蔵トンネルは最近できた立派なトンネルであり、長さは1252mもある。トンネルの手前には旧道の入口があるが、ここは軟弱にもトンネルで越えてしまう。トンネル内はゆるい下り坂になっているので40km/hで走行するが、それでも結構時間がかかる。照明はあるが、ところどころ暗い部分があるのでやはりライトがないと不安である。以前はキャットアイのハロゲンランプにニッカド電池を入れて使用していたが、今回アルカリ電池に替えてみたらかなり強力である。ニッカド電池は、なくなる前は急速に暗くなるので不安である。最近はアルカリ電池が安くなってきたので、パワーの安定しているアルカリ電池を使った方が安心であろう。

地蔵トンネル

 トンネルを抜けると秋野川に沿って長いダウンヒルが続く。ダラダラ坂が続くので、反対から上ったらかなりつらそうな気がする。才谷・立石の集落では収穫間近の稲穂と畦に咲く真っ赤な曼珠沙華とのコントラストが深まりゆく秋を感じさせる。民家の庭先のコスモスもまた実に秋らしい風情がある。30km/h以上のスピードで走っているのにゴールまでは結構遠いような気がする。突然見覚えのある建物が現れて、そこが出発点の下市温泉であった。せっかくだから温泉に入っていきたいところだが、タオル・着替えなど全く用意がないので今回は見送りとなった。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
41.91km 2:00:59 20.8km/h 48.0km/h 470m
地蔵トンネル
300m
片雲の風に誘われて