1995.10.14 鯖街道から湖北へ(1日目)

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自転車

実走日:1995年10月14日(土)
コース:和邇~途中~葛川~朽木~安曇川~新旭~今津~マキノ

 今週末の天気予報は土日とも晴れ。週末に雨が降らないのは実に1ヶ月半ぶりのことだそうだ。これはツーリングに行かない手はない。しかもできるだけ一泊して、なかなか行けない遠いところへ行きたい。コースを考えてみるといろいろあるが、今回はアプローチの便利な琵琶湖方面へ行ってみよう。アプローチは車ではなく、電車で輪行である。この方面は、京都~奈良間の渋滞に加えて、国道161号線の渋滞のひどさを考えると車で行く気が起こらない地域である。和邇駅から途中を経て鯖街道を北上し、朽木から安曇川に抜けて湖岸道路を北上するコースを考えた。鯖街道は3年前に訪れたことがあるが、もう一度じっくり味わってみたいと思う。宿泊はマキノの海津天神社YHである。本当は一泊するほどの距離でもないのだが、日帰りしようと思うと帰りが夜になってしまうので、一泊してゆっくりすることにした。

 JR桜井線・櫟本駅を8時47分発の電車で出発する。ツーリングとは旅なのかスポーツなのかという議論はよく繰り返されてきたが、輪行袋を担いで駅のホームに立ったとき、それは明らかに未知の旅へのプロローグであった。京都駅で湖西線に乗り換えるが、深夜の地震の影響により、神戸方面からの電車が10分ほど遅れて運転されているとのアナウンスがあった。目的地の和邇駅には10時45分に着くはずだったが、結局15分ほど遅れて、着いたのは11時頃であった。和邇駅では手回り品切符を回収されたが、実は手回り品切符を回収されるのは初めての経験である。

 10分で素早く自転車を組み立て、駅前のスーパーで食料を買い込んで出発する。JRの高架下をくぐり、「途中・大原」と書かれた石標のある交差点を右折する。ここから和邇川に沿ってゆるやかに上っていく。湖西道路の下をくぐると少しだけ下りになるが、またゆるい上りがずっと続く。今日は天気がよくて暑すぎるほどで、早くも汗だくになってしまった。やがて堅田方面から来る交通量の多い国道477号線が見えてきて、還来神社のところで合流する。ここでもう標高差100mを上ってきている。この国道をさらに途中まで上る。ちなみに遠方の方の誤解のないように書いておくと、途中というのは地名である。この上りはダラダラ坂が続き、なかなかつらい。

 やっと着いた途中で小休止し、自動販売機でお茶を買って少しだけ飲み、残りをボトルに入れる。実は駅前で水が補給できなかったので、今日は水なしなのである。途中で給水できるところが見つからない限り、ずっと自動販売機に頼ることになりそうだ。途中からはいよいよ国道367号線、別名鯖街道に入る。かつて若狭の海の幸を京へ運んだ道なのでこの名前がある。ここからが最大の難所・花折峠越えの始まりだ。途中トンネルの有料道路ができているが、旧道の方を上っていくとやがて広い新道と合流し、右上方につづら折れの道が見えてくる。あそこまで上るのかと思うと気が重くなる。しかし第1ヘアピンから第2ヘアピンまでは勾配がゆるく、楽である。第2ヘアピンから第3ヘアピンにかけては結構きつい。第4ヘアピンを回ったところで小休止する。ここが下から見えていたところだ。いつの間にかもうこんなに上っている。おそらくここからトンネルまでが一番きつくて、8%くらいの坂がずっと続く。

 荷物さえなければそんなにつらくないかもしれないが、今日は一泊するためかなり重い荷物を背負っている。平地ではそれほど気にならないが、上りになるとまともに荷物の重みが体にかかってくる。荷物を背負うのは背中に汗をかくし、腰が痛くなるので本当にいやだ。しかし自転車には荷物を積むことができないのでこうするしかない。荷物を背負って坂を上るのがつらいのはよくわかっているのに、時間がたつとそれを忘れているのである。もともとロードレーサーで泊まりのツーリングなどするべきではないのかもしれない。きつい上りも、左カーブを曲がったところでトンネルが姿を現し、終わりとなる。トンネルが見えたときは安堵の気持ちであった。意外と簡単に峠に着いたような気がする。和邇からここまで標高差約400m、50分を要した。なお旧道の花折峠はこのトンネルの上を通っているが、ダートである。

花折トンネル

 花折トンネルは1km近くある長いトンネルである。後ろからバイクの集団が入ってきて本当にうるさい。おまけに対向車線からダンプカーが来てさらにうるさい。すべての車がトンネルを抜けたとき、ようやく静寂が訪れた。長いトンネルを抜けると待望の下りである。このコースは花折トンネルまで上ってしまえばあとは下りばかりで、ここまでに蓄えた位置エネルギーだけで走れるので精神的に楽である。トンネル直下からは比良の山並みが目に飛び込んでくる。広かった道もやがて1.5車線くらいの狭い道となり、谷沿いをくねくねと下っていく。ここからがいよいよ葛川地区である。林間を行く細い道は実に落ちついた味わいがある。

 しかしここにも近代化の波は押し寄せていて、あちこちで道路建設が行われている。坂下の集落の手前には3年前にはなかった新しいトンネルがあり、標識には朽木・小浜方面はそちらを通るように書かれているので吸い込まれるようにトンネルに入っていく。このトンネルは中でカーブしているためなかなか出口が見えず、かなり長いトンネルのようだ。トンネルの中は空気抵抗が少ないせいか、恐ろしいほどスピードが出て、気がついたら40km/hを超えていた。それでもかなり時間がかかったので、少なくとも花折トンネルよりは長いであろう。トンネルを抜けると舗装のきれいな広い2車線となり、40km/hオーバーで快適に下れる。しかし考えてみればこのバイパスは集落を迂回するために作られたものであり、旧道はそのまま残っているはずだから、やはり旧道を通った方が味わいがあってよかったであろう。トンネルの中は何も見えないから損した気分である。中村の集落を過ぎるとまた昔ながらの狭い道となる。やっぱりこうでなくてはならない。この道は古い街道の趣が色濃く残り、滋賀県では北国街道とならんでベストツーリングコースのひとつにあげられるだろう。川沿いに集落が点在する風景は実に郷愁をそそる。

坊村の集落

 やがて葛川地区では最もにぎやかな坊村の集落に着く。橋の上から安曇川を見下ろして写真を撮る。このあたりは清流が岩を洗う美しい渓谷である。少し先の町居集落はなぜかすべて同じ色に統一された屋根の家々が寄り添うように並び、遠くから見ると実に絵になる風景であった。梅ノ木では久多方面への分岐がある。まったく車の通らない寂しい道である。実はここから久多峠を越えるコースを構想していたのだが、周回コースがとりにくく、周山を経て丹波へ抜けるコースは距離が長いため、この構想はいまだに実現していない。朽木村との境に近い細川の手前で河原に降りて昼食にする。もう13時を回っている。

安曇川

 下りばかりと思っていたけれど、実際はかなりアップダウンがある。少し上り返して細川の集落を通過し、朽木村に入る。ここからは安曇川も次第に川幅が広くなり、明るい風景に変わっていく。朽木村に入るとあちこちに休憩所があり、少し休憩する。14時を過ぎると早くも夕方の感じがしてくる。まさに秋の日は釣瓶落としだ。古川あたりまで来ると川の向こうに朽木の町並みが見えてくる。この先は広々とした田圃の中を一直線に走る。追い風に乗って30km/h以上で走れ、きわめて快適である。役場のある朽木村の中心は結構にぎやかで、道の駅・朽木新本陣で休憩する。この建物は変わった造りだが、何となく廃校になった学校を改装したような感じがする。道の駅では地元の特産品販売のほか、書店を併設している。このあたりまで来ると、道路の中央には雪国特有の融雪装置が埋め込まれており、信州あたりの雰囲気に似ている。

 野尻で右折し、安曇川町に向かう県道23号線に入る。やがて朽木渓谷を通過する。ここは紅葉の名所だが、まだ紅葉には早い。また道からはあまり渓谷は見えない。この道も結構アップダウンがある。安曇川町に入ると田圃の中の単調な道となる。しかも悪いことに向かい風になってしまった。ずっと同じような景色が続く中、向かい風でなかなか進まない。こういうときは本当にいらいらする。あまり距離を走っていないのにやけに足が重い。花折峠の上りで足を使い過ぎたからだろうか。おまけに荷物の重みで腰が痛くなってきて最悪。ついに我慢できなくなって荷物を下ろし、自動販売機でジュースを飲んで休憩する。ここからも安曇川の町に着くまで実に長かった。

 湖西線の手前の五番領交差点を新旭の標識に従って左折し、やや交通量の多い古い街道に入る。安曇川を渡ると新旭町に入り、そのまま進んで国道161号線を横断すると湖岸道路に入る。湖岸道路は広い新道より湖側に旧道があり、美しい松並木に沿って湖岸ぎりぎりを走るので断然旧道の方がよい。湖岸道路を走るのも昨年の琵琶湖一周以来だ。昨年も休憩した覚えのある中浜の休憩所に立ち寄り、写真を撮る。さらに今津浜を北上する。対岸はかすんで見えず、その広さは湖というよりまさに海そのものだ。そしていよいよマキノ町に入る。確かカタカナの町名は北海道のニセコ町とこのマキノ町の2つだけだったと記憶しているが、そのうちの一つである。途中、秋祭りなのか太鼓に合わせて獅子舞をやっていて、近所の人々が見物している。そこでジュースを飲みながらしばし見物する。ここまで来ればYHまでもうすぐだ。リゾート風の建物が立ち並ぶサニービーチを通過して海津の古い町並みに入る。 国道161号線に出る道を探して国道に出ると、すぐ前に神社の鳥居があって、YHハンドブックで見覚えのある建物があった。まったく迷うことなく、16時過ぎに海津天神社YHに到着した。

 このYHは神社の隣にあって、国民宿舎も併設している。国道沿いにあって便利だが、少々うるさい。風呂は別棟になっていてきれいである。境内には湧き水があってボトルの水を満たすのに最適だ。しかしカメムシの多さには閉口した。窓にはいっぱいへばり付いているし、部屋の中でブンブン飛び回ってうるさいことこの上ない。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
64.23km 3:11:47 20.0km/h 45.5km/h 480m
花折トンネル
395m
片雲の風に誘われて