1996.10.27 奥高野・紅葉の野迫川村

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自転車

実走日:1996年10月27日(日)
コース:小代~辻堂~宇井~池津川~上垣内~上~柞原~今井~中原~小代

 今朝はこの秋一番という冷え込みだったが、朝から雲一つない青空が広がっている。風も弱く、絶好のツーリング日和である。例によって早朝天理を出発し、約2時間であらかじめチェックしておいた国道168号線・小代下トンネル手前の休憩所に駐車する。タイヤに空気を入れようとしてポンプが壊れるというアクシデントに見舞われたが、やや低い空気圧のまま何とか9時50分に出発する。

 国道168号線・十津川街道を南進する。トンネルを避けようとしてトンネル手前で右の旧道に入ったものの、少し行ったところで「危険につき通行止」の標識が目に入る。自転車なら行けるかもしれないと思ったが、だんだん道が荒れてきて怪しい雰囲気なので結局トンネルまで引き返すことにする。小代下トンネルはかなり長いが、35km/hくらいで一気に駆け抜ける。このトンネルはまだ広いのでいいが、この街道は非常に険しい地形に作られたため、暗くて狭い恐怖のトンネルが多いのだ。猿谷ダムを見て短いトンネルをもう一本抜けると下り坂となる。日曜の朝とあって交通量は少ない。30km/hオーバーで快調に進む。民家が集まる辻堂で国道を離れ、右の道に入る。国道はアップダウンが多いので、ここは対岸の道を走るのが楽である。横を流れる新宮川は水量が少なく、深くえぐられた河床を露出している。ほぼ平坦な道を4kmほど走って赤谷で野迫川方面への県道に入る。

 県道に入ったとたん、工事のため河原のダートの道へ迂回されられる。角張った石が多くてかなり乗りにくい箇所もあるが、強引に乗ったまま通過する。実は3年前、この付近で両輪パンクというアクシデントに見舞われた嫌な思い出があるので神経質になっていたのだが、何とか無事通過できた。川沿いの道はゆるやかな上りが続き、紅葉の山が美しい。しかし砂利採取場や堰堤がいたるところにあり、自然破壊が進んでいるのが気になる。赤谷川との出合にはオートキャンプ場がある。ここで道を確認するため地図を見ていると、子供を抱いて散歩中のおっちゃんが「どこまで行くの?」と訊いてきた。「野迫川まで。」と答えると「まだだいぶあるよ。だんだんきつくなるから。」と言われる。その言葉に恐れを抱きつつも「がんばって」と励まされて出発する。しかしこのおっちゃん、「チューブラー」なんていう言葉を知っているところを見るともしかして元自転車乗りなのだろうか。

 赤谷出合からもまだゆるやかな上りが続いている。大したことはないなと思いつつ、きれいなモミジの紅葉を見つけては写真を撮りまくっている。平地での紅葉はまだ早いが、このあたりは今がちょうど見頃である。緑から赤に変わるところが特に美しい。今日の装備は一眼レフに28-70mmのズームと85mm/F1.8の2本、それに偏光フィルターも持参している。だんだん装備が重くなってしまった。しかしザックを替えたおかげであまり重さを感じない。以前使っていたドイターのスーパーバイクは通気性はいいのだが、カメラを入れると極端に重心が低くなり、腰に負担がかかる。新たに購入した小型のカメラザックはカメラとレンズ1本が収まり、全体の長さが短いため重心が背中の方に移り、腰に負担がかからない。経験的に言って腰に負担がかかると非常に疲れ、長時間連続して走ることができない。ウェストバッグなどは背中が蒸れないので一見良さそうだが、重量がまともに腰にかかるためかえってつらいのである。

赤谷付近で見つけた紅葉

 ちょっと走っては写真を撮っているとなかなか進まない。それにスタートダッシュの繰り返しで疲れる。非常にのんびりしながら、やっと川原樋川林道との分岐点に着いた。ここで地図を確認し、フィルムを交換しておく。しかし快適なツーリング気分もここまでであった。分岐点を過ぎるといきなり地獄の上りが待ち受けていた。10%以上あるのではないかと思われる急勾配が延々と続く。39×23Tではペダルを回すのが限界に近く、6~7km/hしか出ない。だいたい、地図をざっと見て川沿いのコースだからゆるやかな上りだろうとタカをくくっていたのが間違いだった。5万図を持っていないのでこれはしかたがない。川沿いといってもここからは川はまったく見えず、川よりずっと高いところを上っている。とにかくとんでもない急勾配だ。大ざっぱに見積もって標高差は600mだから乗鞍に比べれば楽勝という幻想は甘かった。

池津川付近の紅葉

 それでも坂の途中で美しい紅葉の山々を見つけるとまた止まって写真を撮っている。ここで偏光フィルターを取り出してレンズに取り付ける。フィルターを回していくとあるところでものすごく鮮やかな色になる。晴れの日に紅葉を撮ると葉の表面のテカリで意外に白っぽい写真になってしまってがっかりすることがよくあるが、偏光フィルターを使うとテカリが消えて目で見たよりももっと鮮やかな発色が得られる。これがなかなかの快感で一度使うとやめられない。付けたり外したりがめんどくさいので結局付けっぱなしになってしまった。

 相変わらず続く急坂をフラフラになりながら上っていると、展望の良い空き地があり、そこでまた写真を撮って、そろそろ12時なのでここで昼食にする。前にあるオレンジ色に紅葉した木がとても美しい。この道は途中に人家がないため車の通行はほとんどなく、静寂そのものである。しかし、まだ上に続く道を見ながらの食事は気分のよいものではない。まだまだ先は長いので足早に出発する。

きれいな色合いの木

 この先なおも激坂は続く。最近自転車に乗っていないせいか、急速に体力が落ちたのを感じる。よく考えてみれば8月以降は、8月4日の丸岡、9月1日の乗鞍、そして9月22日の大和高原サイクルアタックと月1回ペースでしか乗っていない。しかもレースの時しか乗っていないではないか。これではまったく乗っていないのと同じだ。この体力低下現象は普通は春に見られるのだが、今年は秋にも起こっている。乗鞍からまだ2ヶ月しかたっていないのに、あれがなぜ上れたのか今では絶対信じられない。乗鞍より勾配はきついとはいえ、標高差は半分にも満たない。それがなぜこんなにしんどいのか。たった2ヶ月前のことなのにあのときの体力はもうないのに違いない。1ヶ月も乗らないと完全に元に戻ってしまうものなのである。

 ようやく勾配がゆるくなると紫園という集落に着く。しかしここには別荘風の家が一軒あるだけで他に民家はまったくない。紫園を過ぎると時々下りも現れるようになる。だがこういうときの下りはまた上らなければならないことがわかっているので全然うれしくない。このあたりは紅葉が大変美しく、上を見上げながらまた写真を撮る。青空とのコントラストが素晴らしい。しかしよく見るとフィルムがもう5枚しか残っていない。予備のフィルムは1本しか持って来なかったのでもうない。ツーリングで24枚撮り1本撮り切ったのは珍しいことだ。また少し下ってようやく釜落-平川林道との分岐点に着く。ここで何気なく右の方へ行こうとしたのだが、地図を確認してみると左が正解で、危うく道を間違えるところだった。面倒でも要所要所で地図を確認することが道を間違えないための基本である。

色とりどりの紅葉

 分岐点から少し行くと池津川の集落に着く。ここには数軒の民家があり、農作業をしている人もいる。今までまったく人気のない道を走ってきたので少しほっとした気分である。しばらくはまた川沿いのゆるやかな上りとなる。紅葉が大変きれいだが、フィルムを残しておかなければならないし、写真ばかり撮っていると全然進まないので目で楽しむだけにしておく。ゆるやかだった道もヘアピンが現れはじめるとまた急な上りとなる。しかし山の稜線が近づいてきて、いよいよ上りも終盤にさしかかったことがわかる。やがて車の走行音が近づいてきて、ようやく村の主要道路に合流しそうな雰囲気だ。しかしこの最後の上りがまたとんでもない急勾配で、あと数100mなのに2回も休憩しなければ上りきれなかった。頭上をまたぐコンクリートの橋の下をくぐってついに高野山方面から来る道と合流する。

 このあたりは店もあり、村の中心らしい雰囲気である。野迫川村の役場はこの近くにあるのだが、何と標高は900mもある。近畿でこんな高いところにある村は珍しいのではないだろうか。ここからの道は尾根の上を走る気持ちのよいスカイラインだ。意外にも2車線の立派な道である。しかし近くにめぼしい観光地もない割には異常に交通量が多い。その理由は2輪車ツーリングマップを見てすぐにわかった。この道を通れば高野龍神スカイラインの料金所を「合法的」にパスすることができるのである。それでほとんどの車は高い通行料金を免れるためこちらへ迂回してくるのだった。ようやく見つけた自動販売機でジュースを飲む。まだ上りはだらだらと続くが、尾根の上なのでさほどきつくはない。右手を見ればはるか大峰山脈が延々と連なり、雄大な眺めである。やはり標高1000mからの展望は素晴らしく、苦労して上ってきた甲斐がある。この辺には「雲海の名所」の看板があり、確かに朝早く来ればものすごい雲海を見られそうだ。

尾根上の道より大峰山脈を望む

 「大塔」の標識を見て快適なスカイラインを離れ、薄暗い山の斜面を下り始める。長袖ジャージにタイツでも寒い。しかし上りはやはり暑いので着るものに困る時期である。この下りは非常にきつく、逆に上るのは相当つらいと思われる。はるか下に集落が見えるが、あそこまで下っていくのだろう。ブレーキ握りっぱなしの下りは疲れるばかりで早く終わってほしいと思う。やっとのことで集落まで下ってきて緊張が一気にほぐれる。この辺は結構民家も多く、「上中村」のバス停がある。ここからは川沿いのゆるやかな下りで快適だ。しかしサイクリストにはまったく会わない。やはり、こんなしんどいところに来る物好きはそういないであろう。

 残っているフィルムを全部撮りきってしまいたいと思うが、なぜかこの道沿いにはあまり紅葉がない。植生が違うのだろうか。今井の集落を過ぎると、川沿いにもかかわらず、また上り返しがある。疲れているときにこの上り返しはたまらない。川はやはりはるか下を流れている。しかし、ここからは山全体が紅葉に染まる美しい風景を見られた。ここで写真を撮っておく。あとは国道168号線まで戻るだけだが、もう1回上り返しがあった。中原川が刻む深い谷を見下ろしながら、最後の下りを楽しむ。この道も相当勾配がきつい。やがてアーチ状の中原橋が見えてきて、午後2時50分頃出発地点に到着した。それほど距離は走っていないのに非常に疲れたツーリングであった。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
46.76km 2:41:53 17.3km/h 42.5km/h 980m
県道53号分岐点
610m
片雲の風に誘われて