武平峠から雨乞岳へ

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登山

■コースタイム
武平峠=1:00=クラ谷分岐=1:30=東雨乞岳=0:15=雨乞岳=0:15=東雨乞岳=1:20=クラ谷分岐=1:00=武平峠【total 5:20】


 鈴鹿の山に足を踏み入れるのはこれが初めてである。今までアプローチの遠さから敬遠してきた鈴鹿だが、実際は武平峠まで2時間少々でたどり着けて意外に近いことがわかった。また鈴鹿スカイラインが無料になったのを今頃知ったのであった。武平峠には午前9時過ぎに到着。トンネル西側の駐車場はすでに満車になっている。やはり鈴鹿はものすごい人気である。しかしほとんどの人は鎌ヶ岳か御在所岳へ行くようだ。入口付近に何とか1台置けるスペースを見つけて駐車する。午前9時20分に出発。

 登山口は駐車場から小さな橋を渡ってトンネルから見て道路右側にある。初めは植林の中をジグザグに登っていき、やがてトンネル東口から来る道と合流する。向かい側には新緑がまぶしい鎌ヶ岳がそびえ立っている。植林は長くは続かず、すぐ自然林となる。このあたりに奈良の山との植生の違いを感じる。この道は一人がやっと通れるくらいの狭さで、木の根や岩が多くて実に歩きにくい。さらに雨の後で滑りやすく注意を要する。途中、崩壊したガレ場が一ヶ所あり鎖が張られている。これにつかまって渡るがかなり怖い。その後も良いとは言えない道がずっと続く。距離よりも歩きにくさで時間がかかる感じである。上っているのか下っているのかはっきりしない。途中で峠を越えるはずだが、いつ越えたのかはっきりわからなかった。いつの間にか溝状の道を下るようになるともうすぐクラ谷の分岐である。このあたりは美しい自然林の中で、新緑のシャワーが降り注いでいるようであった。左から別の沢が合流してきてクラ谷の分岐に着いた。

 分岐には道標があって、右にとればコクイ谷、左にとればクラ谷を経て雨乞岳である。ここを左にとると小さな尾根を乗り越してクラ谷へ下る。下りの途中でイワカガミが群落をなして可憐な花を咲かせているのを見つけた。写真を撮ろうと思ったが、不幸にもカメラにはベルビアのフィルムが入っていて、暗すぎて三脚がなければ撮れない。ブレを覚悟で1/15秒のシャッターを切る。また崩壊したガレ場があり、今度はロープも何もないのでかなり肝を冷やす。坂を下りきるとクラ谷の沢に出た。沢の右岸を少し行くと対岸へ渡る場所があるが、ここはかなり幅があり、水も深いので少し苦労した。ここから何度も何度も渡渉を繰り返しながらクラ谷を遡っていく。新緑が美しく、水量豊富で清々しい感じのする谷である。勾配はゆるく、行けども行けども尾根に出そうな気配がない。とにかくあまりに長くて嫌になってくる。やがて沢の音が下に遠ざかるとようやく七入山のコルに着いた。

 ここから美しい雑木林の中の尾根道となり、やっと快適に歩けるかと思ったが長くは続かなかった。すぐ背丈を超える深い笹藪の中に突入し、実にうっとうしい。ヤブをかき分けて抜けると一瞬展望が開けて正面に東雨乞岳の山頂が見えた。まだだいぶ上である。右手に見える平らな頂稜はイブネだろうか。振り返れば御在所岳や鎌ヶ岳もほぼ同じ高さで並んでいる。そこから今度は上からササが覆いかぶさった掘割状の道に突入する。このササがまた中途半端な高さなので前かがみになって歩かなければならず、実に歩きづらい。ササのトンネルで視界を完全にさえぎられ、どれだけ登ったのかさえ定かではない。ただひたすら忍耐の道である。ササの根元にちらほらと咲いているイワカガミだけが唯一の慰めだ。長いササのトンネルを抜けるとようやくササは膝くらいまで低くなり、東雨乞岳の頂上が目の前に見えた。ここからハルリンドウの青い花が目立つようになる。イワカガミもたくさん咲いている。ここなら明るいので写真が撮れそうだ。帰りに撮ってみよう。あとわずかで東雨乞岳の山頂に着いた。


イワカガミ


ハルリンドウ

 途中ではあまり人に出会わなかったが、山頂にはかなりたくさんの人が思い思いの場所で弁当を広げている。広々として実に気持ちのいい山頂である。まだ雨乞岳本峰まで行かなければならないが、ちょうど12時なのでここで昼食にしよう。展望は素晴らしく、まさに360度のパノラマである。近くには御在所岳と国見山のなだらかなスロープ、そして鎌ヶ岳が威容を誇っている。はるか長い道のりを歩いたような気がするが、武平峠は意外に近く見える。北東の方向には岩肌を露出した釈迦ヶ岳、さらに竜ヶ岳から藤原岳、御池岳へと続く鈴鹿の主稜線の山が一望のもとだ。もっと向こうには霊仙山、そして伊吹山までくっきりと見える。北西の方向には琵琶湖と近江平野を見下ろし、はるか比良の山並みも望める。そして東の方には伊勢湾と知多半島までかすかに見える。とにかく文句なしの素晴らしい展望だ。


御在所岳(左)と鎌ヶ岳(右)


東雨乞岳より雨乞岳本峰を望む

 東雨乞岳で展望を楽しんでから、雨乞岳本峰へピストンする。最初は低いササの道で快適だが、鞍部のあたりからまたササが深くなり、胸まで埋まるようになる。またササとの格闘である。鞍部からは少しの上りで意外にあっさりと本峰に着いた。時間にして12~13分といったところだろう。本峰には三角点と大きな山名板があるが、とても狭く展望もきかない。鎌ヶ岳方面がわずかに望めるだけである。ちょっとがっかりする山頂であった。三角点から北側へ笹藪を分けると大峠の沢という小さな池がある。今にも涸れそうな小さな池だが、決して涸れることがないという。池には無数のオタマジャクシが泳いでいた。誰もいなかった山頂には団体が到着してにわかににぎやかになり、弁当を広げて占領されてしまった。あまり展望もないので写真を2枚撮っただけで引き返す。


雨乞岳山頂

 また東雨乞岳に戻り、午後1時半まで展望を楽しんで下山した。途中イワカガミやハルリンドウを撮影したが、ちゃんと撮れているだろうか。下りはクラ谷分岐までずいぶん長く感じられ、上り返しもあってなかなかつらい。さらにクラ谷分岐から武平峠の間は大変歩きにくい道で、疲れた体にはこたえる。午後3時55分、武平峠に到着。今年初めての本格的な山行だったのでかなり疲れた。帰りは2時間ちょうどで天理まで帰れた。

片雲の風に誘われて