登山

下田代一周と尾瀬沼

投稿日:1998 年 8 月 10 日 更新日:

■コースタイム
下田代十字路=0:35=竜宮十字路=0:30=ヨッピ橋=0:15=東電小屋=0:15=赤田代分岐=0:15=下田代十字路=1:35=沼尻=1:10=長蔵小屋=1:10=沼山峠【total 5:45】

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 山小屋の朝は早い。昨夜の団体が4時半頃起き出して騒がしくなったので一緒に起こされる。顔を洗って、5時半頃から朝の写真を撮るため散歩に出かける。さすがに早朝は寒い。至仏山の裾を低く流れる霧が実に絵になる。やがて燧ヶ岳の右肩からまぶしい朝日が昇ってきた。みるみるうちに湿原が光に包まれていく。朝露に濡れた草が輝き出して、それまでの静寂の世界から一転して光溢れる風景に移り変わっていく。何という清々しい風景だろう。毎日繰り返されている光景なのに、こんなに厳粛な気分になったことはなかった。日が昇るとともにさっきまでの寒さはなくなり、一気に暖かくなった。太陽の偉大さを感じる瞬間である。写真を撮り終えて6時前に小屋に戻ると、団体はもう朝食を終えて出発の準備をしているところだった。朝食は6時からのはずなのだが、着くのは遅いくせに出るのは早い。6時から朝食を頂いてお茶を分けてもらう。準備を済ませて7時に小屋を出発する。


燧ヶ岳の日の出

 今日はこれ以上望めないというくらいのド快晴。燧ヶ岳の頂上もすっきりと見える。空は青く澄み渡り、真っ白な筋雲がたなびいている。真正面に至仏山を見ながらまっすぐな木道を竜宮へ向かって歩いていく。途中、朝露に濡れたサワギキョウなどを撮った。湿原に点在する白樺の林もよい被写体になる。やがて帯状の森の中に入り、小さな川を渡る。ここが福島県と群馬県の県境になっている。そこを越えると竜宮小屋が見えてきて竜宮十字路に着いた。ここにはテーブルやベンチが何組か置かれている。この付近の景観はまことに素晴らしく、目の前に広がる池塘と景鶴山の取り合わせが絵になる。


サワギキョウ


竜宮十字路

 今日は沼山峠まで行かなければならないのでそう遠くまで足を伸ばすわけにもいかず、ここから東電小屋を回って見晴へ戻る予定である。山ノ鼻まではまたの機会に譲ることにしよう。竜宮十字路から東電小屋方面へ入ると、今度は至仏山をバックに池塘が広がっている。尾瀬の写真集でよく見かけるような風景だ。もちろんすかさず写真を撮っておく。そこから葦原の中に入っていって長くまっすぐな木道が続く。歩いている人はほとんどいない。両側に広がる大湿原の中にポツポツと点在する白樺がよいアクセントになっている。景鶴山の裾に近づく頃、池塘の中に至仏山の姿を映していた。やがて湿原の端に達し、ヨッピ橋に着いた。


至仏山を映す池塘

 鉄製の吊り橋を渡るとすぐサワギキョウの大群落があった。周りの葦が邪魔になるが、一応写真を撮った。木道は森と湿原の境界付近を通っていく。今度はまた燧ヶ岳の姿を前に見ながら歩く。見晴から見るのとは少し角度が異なる。山頂にガスはまったくなく、今日登った人は最高だったと思う。やがて立派な休憩所のある東電小屋に着いた。小屋自体もかなり立派でモダンな造りである。ここで少し休憩した後、赤田代分岐へ向かう。ここから木道は単線となり、湿原から離れて森の中を通る。この辺を歩く人は非常に少ない。実はこのあたりが新潟県に属する尾瀬ヶ原の一角なのである。やがて東電尾瀬橋という立派な橋を渡ると再び福島県に入る。この川が大変美しかった。そこから少し坂を登って再び湿原に入り、まもなく赤田代の分岐に着いた。


葦原の彼方に至仏山を望む

 ここから左、燧裏林道へはまたの機会にぜひ訪れることにして、下田代の十字路へ戻る。この辺は広大な葦原が広がり、至仏山の眺めも素晴らしい。こんな澄み渡った青空は何度来てもそうめったに出会えるものではないだろうから、しっかり目に焼き付けておく。葦原の中に紫色のサワギキョウの大群落もたくさん見られた。赤田代分岐から15分ほどで見慣れた下田代の十字路に戻った。約2時間半の周遊であった。

 下田代十字路を9時30分に出発。ここで尾瀬ヶ原に別れを告げて、昨日も通った見晴新道入口までのゆるい上り坂を行く。木道は単線なので時々すれ違う人との行き違いがやりにくい。15分ほどで昨日下りてきた登山口を通過する。ここを過ぎると木道はさらに細くなり、道の中央に板を渡しただけで、もはや木道とは呼べなくなってきた。いよいよ段小屋坂と呼ばれる長い上りに入る。いつの間にか木道はなくなり、普通の山道になった。ブナの林が美しいが、石が多くて少々歩きにくい道である。ペースの速いボーイスカウトの集団と抜きつ抜かれつの展開となった。すれ違う人も結構いる。沼尻川の沢音を聞きながら、かなり単調なだらだら上りが続く。今日は天気がよいので結構汗をかく。やがて道はにわかに勾配を増し、結構な急坂となった。正直言って尾瀬にこんな急坂があるとは思わなかった。その急坂を登り詰めると「白砂峠」と書かれた場所に着いた。ようやくこれで上りが終わりである。標高差にして200mほどなのだが、ずいぶん登ったような気がする。白砂峠からは上り以上にきつい坂があり、下るのも結構苦労する。しかし下りは短く、少しで白砂田代と呼ばれる湿原に出て、歩きやすい木道となった。木道が途切れて再び森の中を抜けるとすぐ沼尻の蕎麦屋があり、ほどなく沼尻休憩所に到着した。見晴から1時間35分と、参考タイムよりはかなり早く着いた。ここには長蔵小屋の経営する売店とベンチがあるが、ずいぶん多くの人でにぎわっている。ここまで来てようやく尾瀬沼を間近に眺めることができた。時間も11時を過ぎたので、小屋で作ってもらった弁当を食べる。


尾瀬沼

 沼尻で40分休憩して、いよいよ尾瀬沼の核心部へ向かっていく。ナデッ窪道の登山口があり、ここから見る燧ヶ岳は見晴から見るのとはずいぶん印象が違って見える。道は概ね林の中を通って行くが、時々小さな湿原に出て尾瀬沼を間近に見ることができる。水際に生える細い水草がいかにも湿地帯らしい雰囲気を出している。この辺もやはりサワギキョウがよく目立つ。こう天気がいいと口笛も出てくるのだろう、後ろからずっとついてくる「夏の思い出」のメロディーがあった。現地で聞くそのメロディーはあまりにもイメージにぴったりだった。沼の向こうには景鶴山の頭が終始見え、至仏山の頭も垣間見ることができた。いつでも撮影できるように首からカメラを下げ、立ち止まってはレンズを取っ替え引っ替えしながら写真を撮った。やがて大入洲半島を乗り越し、長英新道の入口に着く。ここまで来ると対岸に長蔵小屋が見えてきた。さらに小さな丘を越え、広大な大江湿原に出た。ここで初めてヤナギランを見た。湿原にはイワショウブの可憐な花がたくさん咲いている。そして沼山峠からの道と合流し、長蔵小屋へと向かう。ここまで来るとさすがに人が多い。それも大半は軽装の観光客である。ほとんどの人はここまで来て引き返してしまうのだろう。実にもったいないことである。ここから湿原越しに見る燧ヶ岳が何とも素晴らしかった。見る角度によって実にさまざまな表情を見せる山である。そして午後1時ちょうど、長蔵小屋の前に到着し、尾瀬沼ビジターセンターに入ってみた。花の写真がたくさん展示されていて、今まで見てきた紫色の花がサワギキョウであることをここで初めて知ったのであった。


大江湿原と燧ヶ岳

 尾瀬沼越しの燧ヶ岳を撮りたかったので、三平峠方面へ少し行ってみる。長蔵小屋から林の中に入る手前に一つポイントがあるが、手前の森が少し邪魔で右側が隠れてしまう。そこから林の中に入ってしばらく展望はきかなくなるが、半島を乗り越える手前にもう一つポイントがあった。ここも手前の草が邪魔で沼が少し隠されるが、燧ヶ岳は完全な姿で望むことができた。これ以上行くと戻るのも大変なので、今回はここまでにして引き返した。そして午後1時40分、長蔵小屋を後にする。


ヤナギラン

 沼山峠へ続く木道に入ると、御池で見たのと同じ入山者数をカウントするセンサーがあった。この辺が広大な大江湿原で、燧ヶ岳をバックにニッコウキスゲが咲き乱れる写真をよく見かけるところだ。まさにそれと同じアングルで写真を撮った。前方には赤紫の花がたくさん咲いている丘が見える。あれはヤナギランの群落に違いない。遠くからでも何となくそれらしい雰囲気はあったが、そこは平野家の墓がある丘だった。近くまで来るとやはりヤナギランであることがわかり、少しだけ寄り道をしてみる。こんな素晴らしいヤナギランの群落は初めて見た。もとの道に戻って湿原の中をゆるやかに登っていくと休憩所があり、いつしか木道は終わり林の中へ入っていく。よく整備された道で勾配は大したことはない。白樺が美しい林の中を淡々と登っていく。初めはすれ違う人が多かったが、いつしかすれ違う人が全くいなくなった。それはバスの到着時間があるのである程度まとまって来るからだろう。やがてにわかに勾配がきつくなり、砂礫地を登るようになるとまたすれ違う人が多くなった。そしてほどなく沼山峠の展望台に着いた。ここから尾瀬沼を遠く眺めることができる。またいつ来られるとも知れぬ尾瀬沼に別れを告げて、バス停へと急いだ。ここからはずっと木道があり、階段状の下りとなって10分ほどで沼山峠のバス停に着いた。ちょうど3時発の臨時バスが止まっており、補助席の最前列にぎりぎり乗ることができた。バスはすぐに発車し、20分で御池に戻ってきた。

 靴洗い場で靴の泥を落とし、車で檜枝岐へと向かう。こちら側はずいぶん道が良い。今日は宿の予約をしていないので、キリンテでキャンプする予定である。しかしキリンテキャンプ場は満員の札が出ていて泊まれなかった。どうしようかと思ったが、道の向かい側には民間のオートキャンプ場がいくつかあり、「からまつキャンプ場」というところがまだ空いていて入ることができた。利用料金は1人600円、駐車500円である。管理人のおばさんが親切で、テントを張る場所を探して案内してくれた。奈良から来たと言えば結構驚かれた。久々のキャンプだったのでテントの設営の仕方を忘れており、少し手間取った。ようやく設営が終わって食事できそうな店を探すが、5時を過ぎているのでもう閉まっている。仕方ないので檜枝岐の町まで出てみるが、やはり食堂は閉まっていて、やっと見つけた蕎麦屋に入って名物の檜枝岐そばを食べた。檜枝岐は一度は来てみたいと思っていた憧れの地。町並みはどこにでもある温泉街という感じだが、ここの山深さは並大抵ではない。そして「燧の湯2号館」へ行って2日間の山旅の疲れを癒やす。入湯料は500円で、露天風呂もある。意外と空いていたのでゆっくりすることができた。温泉を出てテントに戻る頃にはもうすっかり暗くなっていた。空には満天の星が輝き、天の川まではっきりと見えた。やはり旅行者が中心のキャンプ場は花火などして騒ぐ迷惑な人間がおらず、夜になるととても静かだった。しかし、また寒さでなかなか寝つけないのであった。翌日は5時前に目が覚めてテントを撤収し、同じ道を通って小出に戻る。そこからR252とR117を経由して長野へと向かった。今日はあまりすっきりしない天気で、山に入っていた2日間だけが晴れだった。今回は何もかもうまく行きすぎたような気がする。

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