荒沢登山口から田代岳へ

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登山

■コースタイム
荒沢登山口=0:45=荒沢分岐点=0:40=九合目湿原=0:15=田代岳=1:00=荒沢分岐点=0:10=ブナ岱分岐点=0:40=荒沢登山口【total 3:30】

コースマップ

 田代岳は秋田と青森の県境近く、白神山地の最南部に位置する標高1,178mの山である。標高こそ低いが、山頂付近には広大な高層湿原が広がり、以前パンフレットか何かで見て行ってみたいと思っていた。四方から4つの登山口があるようだが、最も一般的に登られているのは大川目川を上り詰めた荒沢登山口らしい。コースガイドによると反対側の上荒沢登山口まで車で行けば徒歩1時間5分で登れるとあるが、林道の走行はかなり厳しそうなので敬遠し、オーソドックスに荒沢登山口から登ることにする。今回の東北旅行では田代岳を最初の目標としていたので、新日本海フェリーで秋田入りし、第1泊目を大湯温泉の黒森荘YHに取った。一夜明けて8月最初の日はすっきりした晴天ではないが、まずまずの登山日和。昨日の秋田は最高気温36℃を記録したが、今日も35℃近くまで上がりそうだ。YHで朝食を取っていると出発が遅くなり、YHを出たのが8時半頃。登山口までは1時間半ほどで行けるかと読んでいたが、岩瀬林道に入ってからの悪路に時間を食われ、結局2時間近くかかってしまった。大広手登山口を見送ってさらに1kmほど進んだところにロケット燃焼試験場への分岐があり、そこを過ぎてすぐ荒沢登山口の広い駐車場に着く。日曜日とあってすでに車はいっぱいだ。何とか隙間を見つけて駐車する。


荒沢登山口の駐車場

 忘れ物を取りに戻ったりしているうちに出発が10時40分になってしまった。さすがにこの時間から登り始める人は誰もいない。すでに日は高く、気温は上昇している。登山口の標高は650mほどしかないからすぐに汗が噴き出す。駐車場から林道を少し進むと登山道の入口があり、立派な案内板が立っている。登山口に入ってすぐのところに一合目の表示がある。沢に沿ってブナの樹林の中をゆるやかに登り始める。沿道にはヤマアジサイの花が美しい。途中少し足場の悪い岩場があり、ロープが張ってある。少し登ると左側に水場があったので喉を潤す。これより先に水場はなかった。そこからもう少し登ると二合目に着く。また同じような上りが続くが、沢は次第に遠ざかりやや勾配がきつくなってくる。そして三合目の表示がなかなか現れない。どこかで見落として次は四合目なのかなと思っていたら甘かった。谷をほぼ登り詰めて尾根に出たところにやっと三合目の表示があった。ここは弘前方面へ抜けるコースとの分岐点になっているが、この道はすでに廃道化しており使用しないようにとの注意書きがある。それにしても二合目と三合目の間はどう考えても長すぎる。おそらく四合目で大広手登山口からの道と合流するので、帳尻を合わせるために長くなっているのだろう。荒沢登山口からの道は距離にして300mほど長いのだ。


三合目・廃道となった弘前ルートが合流する

 三合目を過ぎて尾根に出た後、少し下って再び登り返すと間もなく大広手登山口への分岐となる四合目に着く。下山時道を間違えないようにとの注意書きがある。ここまでほとんど休憩なし、約45分を要した。


四合目・大広手登山口からのルートが合流する

 四合目からはゆるやかな登りが続き、やがて小さな広場となった五合目に着く。ここで上荒沢登山口からの道が合流してくる。道標によると登山口まで0.3kmとなっており、ずいぶん近い。しかし車で登山口まで入るのはかなり難儀すると思われる。ここでちょっとひと息入れて、鳥居をくぐって再び登り始める。次第に登りはきつくなってきて、六合目から七合目にかけてが最もきつい。


五合目・上荒沢登山口からのルートが合流する


七合目・このあたり最もきつい

 木の根などで少々歩きにくい道をあえぎながら登っていくと、七合目に到達した。ここも急な斜面の中にある。七合目を過ぎると幾分勾配がゆるやかになり、笹が目立つようになってくる。ここで今日初めての登山者二人とすれ違う。そして八合目に着くと「九合目はもうすぐ」の表示がある。期待しながら登っていくと小学校高学年と思われる児童と引率の先生の団体とすれ違う。かなりの大人数だ。登山口に停まっていた多数の車はどうもこの団体のものらしい。たくさん挨拶を交わしながら登っていくとほどなく九合目に着いた。確かに近かった気がする。そして間もなく林が途切れ、「高層湿原入口」の表示が現れる。目の前に明るい空が広がっている。心躍る瞬間だ。


九合目湿原より田代岳山頂を望む

 12時ちょっと過ぎに湿原に飛び出すと打って変わって広大な空間が広がる。木道をゆっくりと歩いていく。無数の池塘が点在し、期待を裏切らない眺めだ。ちょうど苗場山や千沼ヶ原と同じような感じである。季節が良ければ湿原には花々が咲き乱れるのだろうが、今咲いているのはギボウシくらいでちょっと寂しい。湿原の規模はそれほど大きくないので、立ち止まらず5分も歩けば薄市沢登山口との分岐点に着く。ここでちょうど下ってきた夫婦の登山者とすれ違った。


山頂付近より九合目湿原を見下ろす

 田代岳の山頂はかなり高度があるように見えるが、実際は標高差60mほどだから大したことはない。振り返れば池塘を散りばめた高層湿原が眼下に広がる。分岐点からほんの10分ほどの登りで再び鳥居をくぐり、山頂に到着した。ここで12時25分。


田代岳山頂

 山頂には中に人が入れる立派な社が建っている。さっきすれ違った夫婦が最後だったようで、山頂には誰もいなかった。どうやら自分が今日最後の登山者らしい。山頂で早速昼食にする。


山頂より弘前市方面を望む

 山頂からはほぼ360度に近い展望が得られるが、今日は霞がかかっていて遠くまでは見えない。近くの山は名前さえ知らず同定もできない。岩木山も見えるはずなのだが、どうも今日は見えないようだ。しかし弘前市街を確認することはできた。しばらく誰もいない山頂を楽しんで、13時15分頃下山を開始する。帰りは湿原で写真を撮りながらゆっくり歩く。そして九合目からは一気に下る。さすがに誰にも出会うことはなかった。水が1リットルでは足りず、残量が少なくなってきたが水場はほとんど下ったところにしかない。少しずつ飲みながらそこまで我慢。夏場はもう少し大きなポリタンが必要だ。二合目と一合目の間にある水場でやっと喉を潤すと間もなく登山口だ。15時05分に登山口に帰着。駐車場には自分の車以外一台もなく、見事に帰っていた。帰りは早口の田代温泉「ユップラ」で疲れを癒す。施設が立派な割には浴場が小さい。この日もまた黒森荘YHで連泊する。

片雲の風に誘われて