2002.5.25 しまなみ海道~尾道から今治・北条へ~(2日目)

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自転車

実走日:2002年5月25日(土)
コース:生口島~大三島~伯方島~大島~今治~北条

 朝8時過ぎに瀬戸田しまなみYHを出発。今日も快晴の素晴らしい天気だ。垂水サンセットビーチの前から国道317号に変わり、まもなく巨大な多々羅大橋が見えてくる。おそらくこの橋はしまなみ海道でも最も優美な橋であろう。青空に白い主塔が良くマッチする。橋の少し手前からミカン畑の間を縫って長いアプローチ路に入る。勾配は自転車向きに緩やかになっており、このあたりは非常に良くできていると思う。上り切ったところに休憩所があり、橋の入り口に料金箱が設置されている。通行料金は100円。向かって橋の左側に付けられた自転車道を走る。三年前に訪れたときはこの自転車道もかなり人であふれていたが、今はほとんどすれ違う人もない。そして決定的なのは自動車道の車の少なさだ。三年前はこのあたり大渋滞であったが、今はたまにしか車が通らない。他人事ながら早くも赤字決定ではないかと心配になってしまう。ただでさえ瀬戸大橋と明石海峡大橋があって、さらに三本目の本四連絡橋だ。しかもまだ全線開通していなくて、通行料金も最も高い。これではどう考えても利用者が見込めるとは思えない。あのときの大混雑は一時的なフィーバーに過ぎなかったのだ。

多々羅大橋

 長い長い多々羅大橋を渡り終え、また長いスロープを下って大三島に上陸する。下りてすぐのところに道の駅があって、三年前は人であふれ返っていたのだが、今は駐車している車もまばらだ。ここから東海岸の国道317号に沿う歩道部分がしまなみ海道となっている。大三島は瀬戸内海でも有数の大きな島なのだが、実はしまなみ海道が通っている部分は非常に短く、わずか4キロほどに過ぎない。そのためこの島はあまり印象に残らない。島の反対側へ行けば大山祗神社という有名な観光スポットがあるのだが、そこへ行くには山を越えなければならず、ちょっと大変だ。3キロほど走って瀬戸地区を過ぎたあたりから後ろを振り返ると多々羅大橋がきれいに見える。二つの主塔を同時にカメラに収められるのはこの場所しかない。

大三島から見た多々羅大橋

 そしてそこから間もなく道は狭くなって、いきなり10%の急坂が現れる。ぐねぐねと急カーブを繰り返しながら、約40メートルほど上らされるのだ。ここだけは新設された自転車道ではなく、旧道をそのまま利用しているからである。誰もが思うことだろうが、ここだけは何とかしてほしい。これでは変速付きでない自転車は到底上れないだろう。

花と大三島橋

 ようやく上りが一段落して平坦になった頃、右手の斜面いっぱいに黄色い花が満開に咲いていた。何という花だろうか? その向こうには丸いアーチの大三島橋が見える。とてもいい眺めだ。そこからもう少し行くと大三島橋の橋上に出る。この橋は唯一のアーチ橋で比較的短い。おそらく最も古くからある橋なのだろう。ここは自転車歩行車道と原付道が一緒になっていて、単に白線で分けられているだけである。原付も自転車も歩行者も同じところを通るが、幅が広いので割と走りやすい。橋を渡り終えるとまた狭いぐねぐねした道が長く続き、ようやく国道317号に出る。そこから西瀬戸自動車道にそって少しの上りとなり、再び下ると海岸に出る。

浜ノ上付近

 伯方島はもともと小さい島だから、あっという間に通り過ぎてしまう。天然塩の生産で有名なところだから名前くらいは聞いたことのある人もいるだろう。間もなく伯方・大島大橋にさしかかろうかという手前、浜ノ上あたりでは白砂の海岸に真っ青な海が美しい。

伯方・大島大橋の橋上

 緩やかなスロープを上ると次第に伯方・大島大橋の全容が見えてくる。上り切ったところには休憩所があって、水が補給できる。少し休んでから橋を渡り始める。中央で写真を撮っていると向こうから来たロードレーサーに乗った50代くらいの男性が止まって話しかけてきた。松山から来た方で、休日には時々走りに来ているそうだ。かなりの自転車好きと見えて、自分の自転車を興味深そうに眺めている。確かにこのMR-4Fはかなり目を引く自転車ではある。この自転車のこともある程度知っているようでいろいろ質問を浴びせてくる。とにかくこの道を走っているといろんな自転車が眺められて楽しいのだそうだ。

伯方・大島大橋

 橋を渡り終え、スロープの途中で写真を撮っていると、なぜかさっきのロードレーサー氏が戻ってきて、追い越していった。ここで折り返すつもりなのだろうか? スロープを下りるとすぐ海岸沿いの広い県道に出る。すぐ横の海を見ると潮の流れが驚くほど速い。狭い海峡になっているからなのだろうが、まるで川を見ているような感じである。大島は宮窪町と吉海町の二つの町からなる文字通り大きな島である。そのうち宮窪町の中心部を間もなく通る。信号を右折して国道317号に入るとダラダラと長い上り坂が始まる。前を見ると先ほど追い越していったロードレーサー氏の姿が見える。やがて西瀬戸自動車道の大島北ICを過ぎると山間部に入り、峠道となる。そして吉海町との境に当たる峠ノ谷が文字通り峠だ。標高100メートルにも満たないものの、なかなか辛い上りであった。ここで先ほどのロードレーサー氏が休憩していたので、立ち止まって話をする。今日は風が強いので遠くまで行くのはあきらめて、伯方・大島大橋の途中にある見近島の展望台で引き返したということだった。これから松山まで帰るらしい。その方によるとしまなみ海道を忠実にたどるより、途中バラ公園というところを経由して行った方が少し遠回りにはなるが、坂が少なくて車が少なくて、おまけに景色が良いという話なので、そこまで一緒に連れていってもらうことになった。

来島海峡大橋

 峠を越えて快調に飛ばし、坂を下り切ったあたりの信号を右折する。ここからはしまなみ海道の正規ルートを外れることになる。しばらく行くとバラ公園があり、港の近くに出た。ここから西津倉というところを回って島の西海岸に出る。なるほどここは車も少なくて走りやすい。そしていくつかカーブを曲がると前方に来島海峡大橋が見えてきた。世界一長い三連吊り橋である。その姿を最も美しく眺められるのがこの場所なのだ。三つの吊り橋を横から同時にカメラに収められるのはこの場所しかない。景色を楽しみながら走っていると間もなく来島海峡大橋の上り口に着いた。

来島海峡大橋の橋上

 さすがにこの橋は最も長いだけあって、高さの方も半端ではない。最も高い部分は海面から70メートルもあるらしい。そのため橋の上に上るのもかなり大変だ。緩やかなスロープを螺旋状にぐるぐる回りながら上っていく。そしてようやく橋の上に出ると素晴らしい景色が広がった。しかし向かい風が猛烈に強くて全然進まない。ロードレーサー氏は先に行ってしまい、離されてしまった。三年前とは打って変わって自転車道を通る人もまばらである。あの時は歩行者の混雑のため渡るのに30分もかかったが、今回は向かい風である。おまけに橋の中央が盛り上がっているため上り坂である。本当にいくら漕いでも全く進まない気がする。結局渡るのにやはり30分ほどかかってしまった。風さえなければ10分少々で渡れるはずなのだが・・。 渡り終える頃にはすっかり疲労困憊してしまった。

 今治側の起点にはサイクリングターミナル糸山があり、立ち寄っていく。するとさっきのロードレーサー氏も休んでいた。またまた駐輪中の自転車など眺めながら自転車談義となる。そしてここで昼食をとってから行くので一応お別れして見送る。これから今治市内に寄ってから帰るそうだ。サイクリングターミナルのレストランで食事して、ちょっと休んで出発。いよいよこれから四国路だ。しかしここから国道196号へ出る道がなかなかわかりにくいのだ。波止浜の湾があって、そこを渡れなければずいぶん遠回りになってしまうのだ。地図を見ると橋のようなものはない。しかし一応ロードレーサー氏の話によると渡れるらしいことは聞いていた。来島海峡大橋への取り付き路から続く下り坂を下り切ったころ、右折して工場地帯に入っていくと堰堤のようなものがあった。どうやらここで渡れるらしい。コンクリート製のかなり狭い堰堤だが、自転車なら問題なく通れる。そうして対岸へ渡り、波止浜の市街地に入る。ここから県道に入って波方から予讃本線沿いに走る。幹線道路とあって交通量は多めだ。大西駅の近くで国道196号に接近するが、できるだけ国道は通らずに並行する旧道を走る。一旦線路を渡り、さらに国道196号の高架の下をくぐって数百メートル行くと自然に左から国道に合流する。これより先は国道を走るしかない。しかし5万図をよく読んでいると部分的に旧道は残っているので、急ぐのでなければそういう道を拾っていくのも面白いだろう。

 国道に入ってからはどうしようもないほど向かい風が強くなってきた。いくら頑張っても20km/hを超えることができない。平均15km/hくらいだろうか。たまらず自販機の前で止まって缶コーヒーを飲みながら休憩する。まだ先は長い。退屈な国道にうんざりする。風を恨みながらだらだらと流して何とか菊間の市街に入る。すると前方に見覚えのあるジャージ姿を発見。何とあのロードレーサー氏に三たび追いついてしまったのである。ちょうど食事している間に今治に寄っていて、少し前を走っていたのだろう。それにしても自分の方が速いのはちょっと意外だった。追い越し際に声をかけると向こうも気づいてくれた。やっぱり同じように向かい風をぼやいている。もう観念してゆっくり帰るらしい。そうだ、こうなったらもうあきらめるしかないのだ。ここからまた道連れに二人で走ることになった。この先は海岸線ぎりぎりのところを走り、向こうには瀬戸内の島々が素晴らしい眺めなのだが、反対車線なのがちょっと残念だ。あまりの向かい風に今は景色を見ている余裕もない。下を向きながら黙々とペダルを漕ぐのみである。それでも話をしながらだと一人で走っているよりは気が紛れる。いよいよ北条市に入り、浅海原の町並みを過ぎて風光明媚な海岸線を行く。そして大浦駅を過ぎたところで岬を越えるためちょっとした上りになるが、ここで工事をしていて道が荒れており余計に疲れた。岬を越えるといよいよラストスパートだ。次第に北条の町並みが近づいてきた。バイパスを左に見送り、直進して旧国道に入る。このあたりは結構古い町並みが残っている。そして伊予北条駅前の交差点でロードレーサー氏とお別れし、右折して鹿島方面へ向かう。ほんの数百メートルで大きな鳥居のある渡船乗り場に到着。本日の宿、北条水軍YHはそのすぐ近くだ。目標通り午後4時到着。外観はYHの看板がなければ普通の民家と見間違うところだ。YHにチェックインを済ませ、自転車を置いて渡船乗り場へ向かう。すぐ向かいの鹿島へは20分おきに渡船が運航されていて料金は往復300円。せっかく来たので鹿島へ渡ってみることにする。

鹿島の鹿

 船が出航すると5分もかからないうちに鹿島に到着。すぐ前には鹿島神社がある。鹿島の名前通り、フェンスで囲まれた中には鹿がたくさんいる。案内板を見てみると島を一周する遊歩道があるようなので歩いてみる。わずか周囲1キロほどの島だから、一周しても20分ほどであろう。反時計回りに歩いてみたが、島の西側に回るとなかなか景色がよい。

伊予二見

 ちょうど島の反対側に回ると伊予二見と呼ばれる注連縄の張られた岩がよく見える。まだ日没にはちょっと早いが、ここは夕日のスポットとして知られている。夫婦岩がシルエットに浮かぶ頃はさぞ美しいであろう。さらに島の南側を回って再び鹿島神社に到着。帰りの船に乗ってYHに戻る。この日はなぜかサイクリストが3人もいて盛り上がった。一人は新居浜からロードレーサーで走ってきた同じ年頃の方で、ヒルクライムレースを専門にやっているという。乗鞍はもちろん、何と鳥海山まで遠征しているそうだ。入賞歴もあるかなりの実力者らしい。普段の練習では石鎚スカイラインを走るなど、聞いただけで驚いてしまった。 ヒルクライム大台ヶ原の話をすると興味を持ったようで、実際に7月14日の大台ヶ原で再会したのである。 夜は松山の「権現温泉」への温泉ツアーがあり、その後YH内の居酒屋「きょん」で生ビールを飲んで盛り上がった。なかなか居心地の良いYHで気に入ってしまった。ちなみに「きょん」はYHで飼っている犬の名前。そしてペアレントさんはどこかで見覚えがあるなと思ったら、以前瀬の本高原YHのペアレントをされていた方であった。

 3年ぶりにしまなみ海道を訪れてみて、開通当時の騒ぎが嘘のように落ち着きを取り戻していた。今は通る人も圧倒的に地元の方が多く、生活の中にしっかりと根差している感を受ける。本来の自転車道とはこのようなものであるべきと思う。各地にサイクリングロードと称する自転車道は多数存在するが、たいていは河川敷などおよそ人の生活とはかけ離れたところに作られていて、町と町を結ぶという躍動感に乏しい。およそ休日にぶらっと走りに行くくらいの利用価値しかない。このしまなみ海道は本州と四国を結ぶという大きな役割を担わされたこれまでにない自転車道という意味で画期的だったのである。一時のブームは去ったとはいえ、この道が日本の自転車文化に及ぼした影響は大きいであろう。これからもこのような自転車道が各地に作られることを期待する。

 3日目は伊予北条駅から帰るだけなので省略。結局、3日とも素晴らしい快晴であった。出発の際にYH前でデジカメで写真を撮ってもらい、YHのチャリダー写真館に載せてもらった。伊予北条9:04発の普通列車で今治まで行き、特急「しおかぜ12号」に乗り換える。それで岡山からはまた性懲りもなく普通と新快速を乗り継いで大阪へ。やっぱり混んでいた。それで天理に着いたのは夕方のまだ早い時間であった。

 今回は最高の天気に恵まれて、それなりに出会いもあって楽しい旅ではあったが、いくつか反省しなければならない点も残った。まずは大きなフロントバッグを付けてしまったことが大失敗であった。前に重いものを付けるとハンドルを取られてすごく乗りにくくなるばかりでなく、輪行の際に荷物が二つになってしまうのが非常に煩わしかった。右に輪行袋を担ぎ、左にフロントバッグを提げるのは歩きにくく、しかも改札を通りにくい。もうこのバッグは二度と使わないと思った。輪行の際は荷物を一つにするのが鉄則である。とはいえ、財布や予備チューブ、カメラなどすぐ取り出したい物を入れておけるスペースはどうしても欲しい。ところが輪行するとサドル下が輪行袋に占領されてしまうため、サドルバッグは使えないのだ。この問題はこれからまだまだ試行錯誤が必要であろう。もう一つの問題はやはり輪行に普通列車は使うべきでないということだった。普通列車はとにかく混む。特にローカル線などは本数が少なく、編成が短いから最悪だ。JRの徹底した合理化により常に過密状態が続き、ものすごく利用しにくくなってしまった。輪行は特急や新幹線、しかも指定席に限る。少々料金は高くなるが仕方がない。実際、岡山くらいの距離であれば新幹線に乗るのも微妙なところなのだが・・。しかも新大阪まで行かなければならないのが面倒で、どうしても普通で行きたくなってしまうのだ。

 これでMR-4Fを購入して初の長距離ツーリングとなったが、折り畳みであることを全く意識させずに長距離を走れることがわかった。輪行の利便性を考えると折り畳みでこれだけ走れれば言うことはない。ただ、これは好みの問題になるが、フラットハンドルはどうしても馴染めなくて、長時間乗っているとすぐ疲れてしまう。それと要のエアサスペンションがどうも不調で、出発前にしっかりエアを入れたのに3日目にはかなり沈み込みが大きくなってしまった。これでは3日以上はサスペンションポンプまで携帯しなければならない。MR-4のサスの初期不良は有名な話で、ほとんどの人が交換した経験を持っているらしい。どうやらこれも噂の初期不良ではないか? 帰ってから早速クレーム修理に出した。その結果、一ヶ月以上経っても全くエアが抜けなくなった。絶好調である。やっぱり噂に漏れず初期不良だったのである。

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
68.88km 4:21:28 15.8km/h 39.0km/h 78m
峠ノ谷
78m
片雲の風に誘われて