ディスクロードは買いか?

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ロードバイク自転車

ロードバイク界では2019年はディスクブレーキ元年と言われており、ここへ来て各メーカーとも一斉にディスクブレーキ車を出してきました。その背景はグランツールでのディスクブレーキ解禁と、パーツの規格がある程度固まってきたからでしょう。2020年はさらにディスクブレーキ化が加速し、今後リムブレーキ車は生産しないと宣言するメーカーもちらほら出てきています。少なくともハイエンドモデルではディスクブレーキ車しか選択肢がなくなることも時間の問題でしょう。

そのような流れからいずれは全てディスクブレーキに置き換わり、リムブレーキは絶滅するとまで言われています。そうなると今リムブレーキ車に乗っている人は部品の供給を断たれ、自転車本体を買い換えざるを得なくなるわけです。だから今のうちに買い換えておこうと考える人も多いのでしょう。

ただこの動きは業界主導で行われていることを忘れてはなりません。今の自転車業界は圧倒的にグラベルロードとディスクロード推しです。もううんざりするくらいにメーカーもメディアもそればっかり宣伝しています。そこまでする理由は明確で、ロードバイクが売れなくなっているからです。世界的に見てもそうですが、日本では特に顕著です。その原因は弱虫ペダルブームの衰退と消費増税にあります。2010年頃は弱虫ペダルのブームに乗って爆発的にロードバイクが売れましたが、今はその勢いはありません。一度買った人はそう簡単に買い換えませんから、既に市場は飽和しています。それに追い打ちをかけたのが消費増税です。10%も税金を取られるとなると、ロードバイクのような高額商品は絶対売れません。実際、2019年10月以降はロードバイクの売れ行きが激減しています。日本ではもう再浮上の余地はないことは確実です。

業界がそんな苦境にありますから、何とか新機軸を投入して買い換え需要を掘り起こそうと躍起になっているわけです。そこへ白羽の矢が立ったのがグラベルロードとディスクロードです。どちらもディスクブレーキを搭載していることには違いがありません。境界があいまいなところもありますが、大ざっぱに言えばタイヤが太いのがグラベルロードで、細いのがディスクロードということになるでしょう。このうちグラベルロードは以前書きましたように、日本で流行る可能性はきわめて低いです。一部の人の間では盛り上がっているようですが、圧倒的多数のロード乗りは興味もないようです。今の若い人は知らないと思いますが、1990年代には日本でMTBの一大ブームがありました。でも十数年で廃れました。一度廃れたものがまた流行るとは思えません。日本でオフロード系は鬼門なのです。

グラベルロードは日本では流行らない?
昨年あたりからでしょうか、日本でもグラベルロードというものが急速に注目されるようになりました。これはディスクブレーキの普及とも関連しているのですが、今年はどの自転車メーカーもグラベルロードの開発に力を入れているように思えます。ラインナップも...

では普通のディスクロードなら売れるのか? それも微妙だと思います。これから買うなら絶対ディスクにした方が良いという意見もありますが、まだ先行きが見通せない中であわててディスクロードに飛び付くのもどうかと思います。明確な理由もなく他人の意見、特に自転車屋のセールストークを過信するのは危険です。

お断りしておきますが、ディスクブレーキを否定するものではありません。もちろん多大なメリットもあり、それが必要な人には恩恵となるでしょう。ただ問題なのは業界主導でディスクブレーキ化が推進されて選択肢がなくなってしまうことです。本来はディスクブレーキとリムブレーキが共存できて、ユーザーが好きな方を選べることが理想的な姿であるべきです。メーカーの一方的な都合で選択肢が排除されてしまうことはユーザーにとって不幸でしかありません。

確かにマウンテンバイクではかなり前からディスクブレーキ化が進行し、すでにVブレーキというのはごく低価格な製品を除いて絶滅しています。でもMTBとロードバイクではちょっと事情が異なると思うのですよ。MTBは基本的に下りしかなく、コントロール性が重視されます。ですからブレーキ性能というものが非常に重要なわけです。圧倒的に軽い力で強力な制動力が得られ、泥詰まりにも強いディスクブレーキには絶対的な優位性があります。でもロードバイクとなるとそこまでの優位性があるでしょうか? メリットがあればデメリットもあるわけで、それを天秤にかけると必ずしも優位とは言えないと思います。

こういう話をするのは自分自身が一度はディスクブレーキを検討したからです。僕の場合は普通のディスクロードじゃなくてグラベルロードでしたが、ディスクブレーキには違いありません。いったんロードバイクを手放してリセットしたため、ディスク移行のチャンスはあったわけです。にもかかわらず、結果的にはノーマルなリムブレーキ車を選びました。それはメリットとデメリットを考慮した結果、デメリットの方が大きいと判断されたからです。選定の過程でディスクブレーキについてかなり研究しました。古くからのロード乗りはディスクブレーキについてあまり知らない人も多いと思います。そこでディスクブレーキのメリットとデメリットについて、さらに日本では業界が期待するほどディスクロードは普及しないだろうと予想する理由について語ってみます。

ディスクブレーキの種類

ディスクブレーキには大きく分けて油圧式と機械式があります。このうち主流となっているのは油圧式で、機械式は低価格のエントリーモデルくらいにしか使われません。油圧式は自動車やオートバイと同じようにオイルでピストンを押し出すのに対し、機械式は通常のキャリパーブレーキと同じくワイヤーで引っ張る方式です。

ディスクブレーキのメリット

軽いタッチで制動力が得られる

これは油圧式に限られます。機械式だとレバーを引く力そのものはリムブレーキと変わりません。よく誤解されがちですが、ディスクブレーキだからと言ってリムブレーキより強力に効くというわけではありません。シマノも制動力そのものはリムブレーキと同等と言っています。ただ油圧式の場合はパスカルの原理により圧力が増幅されるため、軽い力で大きな制動力が得られるということです。自分は乗ったことないのでわかりませんが、指一本で軽く止まれるらしいです。長い下りなどでは握力を低減できるので、結果的に疲労の軽減につながるでしょう。

雨に強い

雨の日にロードバイクに乗ったことがある人はわかると思いますが、リムブレーキは決定的に効きません。怖くて下り坂でスピードなんか出せないですね。しかもブレーキシューの減りがものすごく早くなります。一方ディスクブレーキは雨の日でも制動力が落ちにくいことが最大の特長です。それはディスクローターが路面から離れているため、巻き上げた水の影響を受けにくいからです。雨天時の制動力はディスクブレーキの圧勝です。雨の日は自転車なんか乗らないよという人は別に関係ないですが、通勤や通学で乗らざるを得ない人には大きなメリットになるでしょう。

タイヤの自由度が高い

リムブレーキは構造的にクリアランスがないので28Cが限界となりますが、ディスクブレーキはタイヤの太さから自由なためフレームが許す限り太いタイヤを装着することができます。最近のディスクロードは標準で28Cが付いていることも多いですが、さらに太い32Cなどを履いてグラベルロード風に使うこともできます。

カーボンホイールを安全に使える

カーボンリムは摩擦や熱に弱いため、キャリパーブレーキでは専用のブレーキシューを使わなければなりません。それでもブレーキの使いすぎで過熱すると変形する恐れがあり、使用には慎重さが求められます。ディスクブレーキだとリムとは全く接触しないので過熱の心配がなく、カーボンホイールを安心して使うことができます。

リムが消耗しない

リムブレーキは直接リムを摩擦するため、長年使っているとリムが摩耗してきます。どんなホイールでも使用限度の目安としてリムにスリットやピンホールが付いていますが、それが見えなくなったら使ってはいけないということです。したがってリムが寿命に達したら交換する必要がありますが、それは組み替えが必要なので、完組ホイールの場合はホイールごと交換ということになるでしょう。どんな高級ホイールであってもこの宿命からは逃れられません。特に走行距離が多い人にとっては切実な問題です。しかしディスクブレーキならリムとは一切接触しないのでローターの交換だけで済みます。結果的にお気に入りのホイールを長く使うことが可能になるわけです。

ディスクブレーキのデメリット

重くなる

ディスクブレーキは構造的に部品点数が増えるため、必然的に重くなります。また制動力に耐えられるようにフレームやホイールにも剛性を持たせる必要があるため、どうしても重くなってしまいます。グレードにもよりますが、同じグレードで比較すればリムブレーキ車よりおおよそ300~400gくらい重くなるんじゃないでしょうか? 将来的に技術の進歩で軽くなる可能性はありますが、それでもリムブレーキより軽くなることは絶対にないでしょう。せいぜい350ml缶1本分と思えば大したことないと思われるかもしれませんが、これを他の部分で吸収するには莫大なコストがかかるのですよ。究極の軽量化を目指すならばディスクは不向きです。

メンテナンスが面倒

機械式ならリムブレーキと同じようにワイヤー交換だけで済みます。しかし問題は油圧式の場合です。ブレーキオイルが劣化したり気泡が入ることがあるため、1年に1回程度、定期的にオイル交換(ブリーディング)を行わなければなりません。器用な人は自分でやっちゃうみたいですが、特殊な器具を必要とする上、プロでも難しい作業です。ましてや命に関わる部分ですから基本的にはショップに依頼することになります。そうするとランニングコストも結構馬鹿になりません。ショップによっては通販で買ったロードバイクを受け付けてくれないこともあるでしょう。油圧式は何かと厄介です。一説によると、素人にできない仕事を増やして自転車屋が儲けるためとも言われています(笑)。

トラブルに弱い

リムブレーキは構造が単純なため、何かトラブルが起こっても自分で対処できます。調整も簡単です。たいていは片効きやワイヤーのほつれくらいのものです。しかしディスクブレーキは構造が複雑なため、素人が調整するのは非常に困難です。これは油圧式も機械式も同じ。パッドとローターの隙間はコンマ数ミリと非常に狭いため、わずかでもズレると音鳴りが発生します。極端な話、カーブで車体を傾けただけでもフレームがたわんで音鳴りが発生することもあるようです。ローターのセンター出しは非常にシビアで難しい作業です。さらに怖いのはローターの歪みとオイル漏れです。歪みはそう簡単には起こりませんが、何かに接触してしまったり輪行時には起こりやすいトラブルです。オイル漏れも長期間メンテナンスしてないとたまにあるようです。こういうトラブルがいったん起こったら出先での修復は不可能で、走行を中止せざるを得なくなります。リムブレーキでは起こり得ないトラブルを抱え込むリスクがあるということで、特にロングツーリングでの不安要素が増えます。

見た目が美しくない

これには異論があるでしょうが、基本的にロードバイクは機能美の極致ですから余計な物を付けると美観が壊れます。ホイールの真ん中にあるローターはどうしても目立ってしまいます。それをカッコイイと思う人もいるのでしょうが、僕には美しくないとしか思えません。もともとロードバイクにはなかったものですから。あとホイールもスポークに大きな負荷かがかかるため、リムブレーキ車のようにスポーク数を減らすことができず、ラジアル組みにすることもできません。意外と気付かないかもしれませんが、言われてみればそうでしょ? 個人的にはスポーク数の少ないラジアル組みが最も美しいと思っているので、これは残念です。

コストが高い

一般的に言ってディスクブレーキ、特に油圧式になるとコンポの値段が割高になります。大まかに言えば同じ値段ならリムブレーキ車よりワンランク下のグレードしか買えないという感じです。コスト増のデメリットを考えると、それに見合うメリットがあるかどうかは思案のしどころでしょう。今後さらにディスクブレーキモデルの人気が高まっていくと相対的にリムブレーキモデルは値下げされることになり、さらに格差が広がる可能性があります。また初期コストだけでなく、オイル交換、パッド交換、ローター交換などにかかる維持コストもリムブレーキに比べて割高です。

フレームが固くなる

リムブレーキはホイールの外周部を止めるのに対し、ディスクブレーキはホイールの内周部を止めるという違いがあります。ホイールを止めるのにどちらが大きな力を必要とするかというと、これは圧倒的にディスクブレーキの方です。それはテコの原理から考えるとすぐわかるでしょう。ディスクブレーキのキャリパーを固定している部分には非常に大きな力がかかるため、フレームの剛性を高くしなければなりません。一般的にフレームの剛性が高いと加速性が良くなると言われてますが、良いことばかりではありません。パワーのあるライダーには良いかもしれませんが、脚力のないライダーにはそれだけ力が跳ね返ってくるため脚を削られます。もちろんロングライド時の振動吸収性も悪くなるので疲れやすくなります。ある程度、乗り手を選ぶフレームと言えるでしょう。

ディスクブレーキとスルーアクスルはセット

古くからのロード乗りにはあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、スルーアクスルというのはクイックリリースに代わる新しいホイールの固定方式です。簡単に言えば、中空になったハブ軸に金属のシャフトを貫通させてネジでフレームに固定します。クイックリリースとはフレーム・ホイールともに構造が異なるので全く互換性がありません。利点としてはフレームの剛性が上がること、ローターの位置ズレが起きないことなどが言われています。

数年前まではディスクブレーキ車でもクイックリリースが主流でした。ところが今年あたりからはほとんどがスルーアクスルになり、2020年モデルではエントリーモデルも含めてクイックリリースは絶滅したと言っていいでしょう。つまりディスクブレーキ車を選ぶとホイールの固定方式そのものが変わるということです。

レース目的にはメリットしかないように言われてますが、一般ユーザーにとっては迷惑でしかないですよ。なぜなら現在市販されている自転車用品はクイックリリースを前提としているため、その全てが使えなくなるからです。たとえば輪行用のエンド金具、車載用のキャリア、ディスプレイスタンドなどが含まれます。その全てをスルーアクスル用に買い直さなければならないし、クイックリリースと共用することもできません。ハブ軸に付けるタイプのライトホルダーなんかは構造的に無理ですね。

日本ではディスクロードは普及しない?

ディスクブレーキのメリットとデメリットを踏まえた上で、日本ではグラベルロードほどではないにせよ、ディスクロードも業界が期待するほど売れないだろうと予想しています。そう判断する理由は、日本はいろんな意味でガラパゴスだからです。世界で流行っているものが日本で流行るとは限らないし、逆もまたしかり。日本にはディスクロードの普及を阻む二つの大きな特殊事情があります。

日本ではヒルクライムが人気

海外と決定的に異なるのは、日本ではヒルクライムレースが圧倒的に人気だということです。何と言っても国土の4分の3は山地ですから山登りには事欠きません。ヒルクライムはスピードが出ないので比較的安全であり、交通規制もしやすいことから全国各地でヒルクライムレースが頻繁に開催されています。弱虫ペダルブームでもわかるように日本は坂バカ王国です(笑)。

ヒルクライムレースでは基本的に上りしかありません。ブレーキをかける必要がそもそもないので、ディスクブレーキはただの重りにしかなりません(笑)。ヒルクライマーは軽量化を何よりも優先しますから、重いディスクロードは敬遠されます。たかが数百グラムの差であっても1秒を争うレースシーンでは勝敗を分ける可能性があります。ですから最前線で戦っているヒルクライマーほどリムブレーキへ行ってしまいます。ライバルより重量で負けたくないでしょ? 実際、乗鞍の映像とか見たらみんなリムブレーキですよね?

輪行に向いていない

自転車を分解して列車に持ち込む輪行というのは日本独自の文化です。海外ではそのまま載せられるのが当たり前なので輪行という習慣はありません。海外メーカーは日本の事情など考えていませんから、輪行をしようとした場合にディスクブレーキは大きな障害になります。輪行は不可能ではありませんが、リムブレーキ車より手間が余計にかかります。これは車載の場合にも当てはまります。つまり旅には向いていないということです。

輪行する際にはただでさえ傷が付かないようにあちこちを保護する必要があります。それに加えてディスクロードだとローターの保護も必要になります。といっても完全な方法はありませんが、ぶつけないように細心の注意を払わなければなりません。万が一、ローターを曲げちゃうとその場で終了!です。いくら自分が気を付けていても他の乗客がぶつかる可能性もあり得ます。ましてや飛行機輪行なんて怖くてできないでしょう。用心深い人はローターを外したりするようですが、輪行のたびにいちいちそんな面倒なことやってられますか? そんなことをするくらいならリムブレーキにした方がよっぽど楽だと思いますよ。

それから油圧式で怖いのはホイールを外した状態でブレーキを握ってはいけないということです。うっかり握ってしまうとピストンが押し出されてホイールが入らなくなってしまいます。マイナスドライバーなどの工具があれば一応戻すことは可能みたいですが、これなんか絶対やりそうだから余計な神経は使いたくないですね。そうならないためにはパッドスペーサーを挟んでおく必要があり、手間と荷物が増えます。あと昔よく言われていたのが自転車を倒立させるとオイルに気泡が入ってブレーキが効かなくなるという問題。最近のディスクブレーキは問題ないと言われてますが、それでも完璧ではないのでできるだけ倒立はさせない方が精神衛生上よろしいでしょう。

これにスルーアクスルが加わるとさらに面倒なことになります。まずホイールの着脱がクイックリリースより手間がかかります。最近はレバーのないタイプが増えているので、車種によっては六角レンチが必要になります。そして縦置きの場合に必要なエンド金具。当然ながらクイックリリース用のものは使えないのでスルーアクスル専用を用意する必要がありますが、今のところ選択肢が少ないです。車載の場合も普通のクイックリリース用キャリアは使えません。スルーアクスル用となると選択肢が限られてしまいます。もちろんクイックリリースと使い回しすることもできません。あと車載の場合に困るのが外した前輪の置き場所です。クイックリリースなら専用のホイールホルダーがあるのですが、スルーアクスル用にはそういうものがありません。ホイールを車内に転がしておくととても邪魔ですよ。

輪行にせよ車載にせよ、ディスクブレーキとスルーアクスルの組み合わせはとても面倒になります。輪行ってたいがい急いでいることが多いので余計な手間はかけたくありません。慣れたら同じだよという人もいますが、いろいろ神経を使うことも増えるので、僕はそういうの絶対に嫌ですね。出先でトラブルが起こると修復不可能になることが多く、旅そのものをあきらめるリスクが増えます。余計な心配事はできる限り減らしたいものです。輪行時の利便性と安心感を考えると旅の道具として使いたい人には積極的にすすめられませんが、輪行は一切しない、あるいは手間がかかっても構わないという人であればディスクロードを選んでも良いと思います。

ツーリング目的なら機械式でクイックリリース式が最適だが・・

輪行時の面倒な問題を考えると油圧式というのはデメリットしかありません。レースではなく旅が目的なら機械式を選べば比較的デメリットは少ないと言えます。その代わりメリットも一つなくなりますが、雨に強いだけでもツーリングでは威力を発揮します。さらにクイックリリース式であればリムブレーキ車とさほど変わらない装備・手順で輪行が可能になります。ただ残念なことに現在では機械式でクイックリリース式というのはほとんどありません。自分もこのタイプのグラベルロードを検討していましたが、すでに廃番で入手不能でした。旅には最も適しているのがグラベルロードなのに、輪行向きでないというのは矛盾しています。

数年前まではディスクロードもクイックリリースでリアエンド幅135mmという規格が主流だったのですが、これはあっという間に廃れて現在ではほぼ絶滅しています。今後は対応したホイールも入手困難になることが予想されるため、このタイプのディスクロードはたとえ投げ売りされていても今は手を出さないのが無難です。もう終わった規格ですから、拡張性が全くなくなってしまいます。

カーボンホイールを使いたいならディスクブレーキ一択

プロがディスクブレーキに移行する最大の理由は軽量なカーボンホイールを安定して使うためです。ほぼそのためだけと言っても過言ではありません。もちろんリムブレーキでも使えないことはないですが、過熱によってリムが変形するリスクを伴うため、ハードな使用には適しません。リムブレーキでカーボンホイールはできるだけやめた方が無難でしょう。

逆に言えば、カーボンホイールなんて興味ないよという人にはディスクブレーキは大して意味がないと言えます。ですからどうしてもカーボンホイールを使いたいかどうかが選択のポイントになると思います。

ディスクブレーキだから安全ではない

多くの人がしている勘違いですが、ディスクブレーキはよく効くので安全だという神話です。自転車屋も初心者には安全なディスクブレーキが良いと強くすすめたりもします(もちろん本当は高い物を売りたいからです笑)。得てしてディスクブレーキには「安全」というキーワードが強調されがちです。

しかし乾燥時のブレーキの効き自体はリムブレーキもディスクブレーキも変わりません。そのことはシマノも言っています。ちょっと考えればわかることですが、最終的に自転車を止めるのはタイヤのグリップ力です。いくらブレーキがホイールの回転を止めてもタイヤのグリップ力が耐えられなければ滑ってしまいます。ロードバイクの細いタイヤはもともとグリップが弱いので簡単に滑ります。ディスクブレーキは安全だからと言って高速でカーブに突っ込めばどういうことになるか、容易に想像がつくでしょう。むしろディスクブレーキだから安全だと過信する方が危険です。結局、安全かどうかは乗り手の技量に委ねられるのです。

雨の日に乗らなければディスクロードは必要ない

上で述べたように最終的に自転車を止めるのはタイヤなので、路面が濡れていればディスクブレーキでも確実に制動力は落ちます。ただ低下の度合いがリムブレーキに比べて小さいというだけのことです。

もちろん通勤通学で毎日乗らなければならない人にとっては雨の日でも安心して乗れることは大事ですから、ディスクロードを選んだ方が良いと言えるでしょう。でも趣味のサイクリングで雨の日に乗りたい人がどのくらいいるでしょうか? ほとんどのサイクリストは雨なら乗ることをあきらめます。好んで雨の日に乗りたい人なんかいません。趣味なんですから雨なら乗らなければいいだけのことです。

グラベルロードは太いタイヤを履くためにディスクブレーキは絶対必要です。しかし普通のロードバイクにディスクブレーキが必要でしょうか? これは雨の日以外にはさしたるメリットがありません。今まで晴天時にはリムブレーキで何の不自由もなく使えていたのですから、なければ困るというものではないでしょう。

もともとタイヤの細いロードバイクにはそれほど高い制動力は期待できないのであって、雨の日に乗らない限りディスクブレーキである必然性はありません。それでもディスクを推してくるのはメーカーが売りたいだけのことです。結局、雨の日でも絶対乗らなければならない理由がなければディスクロードにこだわる必要はないということです。

初めてロードバイクを買う人はどうか?

すでにリムブレーキ車に乗っている人が買い換えるのと違って、これからロードバイクを始めようという人の場合はどうでしょうか? 現在リムブレーキ車に乗っている人はホイールをグレードアップしたりしていますから、もしディスクロードに乗り換えるとホイールが無駄になってしまいます。だからなかなかディスクロードには乗り換えにくい事情があります。しかし全く新しく購入する人ならそういう縛りは一切ありませんから自由に選べるはずです。

全くの初心者にアドバイスする場合、今なら迷わずディスクロードにしとけという人がやはり多いようですね。理由は将来性を考えてのことです。今リムブレーキ車を買ってもすぐにホイールなどが入手困難になるから将来性がないという主張です。

それはもっともらしく聞こえますが、そんなにすぐリムブレーキ対応のホイールが絶滅するとは思えません。現在でもリムブレーキ対応の方が種類も多く出回っています。それはリムブレーキ車を保有している人が圧倒的に多いからでしょう。そんなに早く市場が枯渇するはずがありません。個人的にはリムブレーキが絶滅することはないと思っています。理由は軽さへの要求は永久になくならないからです。また低価格帯のエントリーモデルが値上がりしてしまうと売れなくなるので、これらの層から消えることはないでしょう。

一般的にディスクブレーキ車はリムブレーキ車に比べて価格が4~5万円ほど高くなるのが普通です。ハイエンドモデルになればその差はさらに広がります。すでにディスクブレーキ車しか発売していないメーカーもあるので、その場合は選択肢がないですが、もしどちらでも選べるのであればこれはじっくり考えた方がいいと思います。

初心者は自転車以外の装備を何も持っていないことが普通ですから、あえてリムブレーキ車を選べば差額分でウェアやシューズ、ヘルメットなどを揃えられますし、ミドルグレードのホイールに交換した方が走行性能は明らかに向上します。1台目のロードバイクとしては予算が15万円程度という人が一番多いでしょうから、この差はものすごく大きいですね。それに初心者が油圧ディスクを買っても自分ではメンテできないのでショップに丸投げするしかないですよ。その分コストもかさみます。それよりは扱いやすいリムブレーキを自分でいじってメンテを覚えていった方が得策だと思います。

要はディスクブレーキの必要性があるかどうかで考えればいいんですよ。雨の日でも絶対乗りたいならディスクブレーキ、そうでなければリムブレーキで十分です。価格的なメリットはリムブレーキが圧倒的に大きいですね。今のところお好きな方をどうぞとしか言いようがないですね。将来性がどうのこうので決めるのは明らかな間違いです。おそらく次の買い換えを考える頃にはまだリムブレーキは残っているでしょう(笑)。

歴史は繰り返す

自転車の歴史を長く見てますと、一時期流行ったものが廃れたり、また復活したりすることはよくあることです。最近の例で言うと、チューブレスタイヤやプレスフィットBBなんかもそうですね。これからはチューブレスの時代が来ると言われた時期もありましたが、現状を見てみると圧倒的にクリンチャーが優勢ですよね? チューブレスって乗り心地が良いとかパンクしにくいと言われてますが、一度パンクするとタイヤをはめるのがものすごく大変なんですよ。

プレスフィットBBもフレームの剛性が上がるという理由で一気に広まりましたが、音鳴りなどのトラブルも多く、最近ではネジ切りBBに回帰する動きが明らかに出ています。要するにメンテナンス性の悪いものは敬遠される傾向があります。それはディスクブレーキも同じです。もちろんプロレーサーなら専属のメカニックがいますからディスクブレーキでも全然問題ないわけですが、一般ライダーにとってメンテナンスが難しいディスクブレーキは負担が増えるだけなんですね。ハイエンドのディスクブレーキ化の流れは当面続くでしょうが、ミドルレンジ、ローエンドでは逆にリムブレーキに回帰する流れがいずれ出てくるだろうと予想しています。ボリュームゾーンである10~20万円クラスが値上がりすると売れませんからね。歴史が証明しているように、メンテナンス性の悪いものは一般ユーザー向けとしては淘汰されていくのです。

結論:ディスクロードは今すぐ買う必要はない

自分はもともとグラベルロードを検討していましたが、ディスクブレーキとスルーアクスルは旅の道具としてはデメリットの方が大きいと判断し、結局は普通のリムブレーキ車に落ち着きました。めんどくさいことが大嫌いですから、デリケートな油圧式ディスクなんて初めから検討にも上がりませんでした。

ディスクブレーキとリムブレーキはどちらが優れているかという問題ではなくて、目的に応じて使い分けるべきものなんです。どうしても雨の日も乗らなければならないならディスクブレーキにした方が良いし、輪行したいならリムブレーキにした方がはるかに楽です。気に入ったフレームがどちらかにしかないというのであれば、それで選んでもいいでしょう。しかしリムブレーキには将来性がないという理由で買い換えを考えるのは明らかに間違っています。

今のところメーカーもメディアもディスク推しのイケイケドンドンで、あと数年でリムブレーキは淘汰されるようなことを言っていますが、僕にはそのように思えません。なぜならそこまでの絶対的な優位性はないからです。たとえば、かつてレコードがCDに置き換わったり、フィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったような絶対的な優位性はディスクブレーキにはありません。むしろメリットとデメリットが同じくらいある状態ではそんなに一気に普及するとは思えないのです。ディスクロードが広く行き渡った頃には、これからはリムブレーキの時代が来る!なんて言い出しそうな気がします(笑)。業界は次々と規格を変えないと売れませんから。

ディスクロードも数年前までは規格が乱立していましたが、現在ではフラットマウント、12mmスルーアクスル、リアエンド幅142mmという方向でほぼ固まっています。だから一気にディスクロードが普及してきたわけですが、まだスルーアクスルやローターの規格にはバラバラなところがあって統一されていない状況です。今後もシマノの12速化でまだ変わり得る可能性はあるので、すぐに必要がない限りあわてて手を出さない方が良いと思います。あと数年、動向を眺めてからでも遅くはありません。

要は先のことなんて誰にもわからないのですから、将来性を考えてどうこうするのではなく、今欲しい物を買えばいいだけのことです。ディスクロードに魅力を感じているのであればすぐ買えば良いし、リムブレーキの方が良いと思うなら買えるうちに買っておいた方がいいです。今はリムブレーキ車の型落ちが値下げされてかなりお買い得になってますよ(笑)。将来リムブレーキがなくなるからという不安にかられてディスクロードを買うのだけはやめましょう。それは業界の思惑に踊らされているだけです。そういうことは本当にディスクブレーキ車しか選択肢がなくなったときに考えれば良いのです。まあそういう状況はあって欲しくないし、あってはならないと思いますが・・

片雲の風に誘われて

コメント

  1. せんち より:

    ディスクブレーキは消極的容認派ですが、メーカーがリムブレーキに戻ってくることはないと思います。
    バーレーンマクラーレンが来年のバイクをディスクオンリーにするという記事で、メリダのGMが
    “Disc-brake-equipped bikes account for 90 per cent of our total sales and soon, rim-brake bikes will be phased out completely from our product portfolio regardless of what the traditionalists think.”
    「ディスクブレーキバイクは全体の9割に上り、リムブレーキバイクは伝統主義者がどう考えているかに関わらずラインナップから消えていくだろう」と述べています。
    https://www.cyclingnews.com/news/bahrain-mclaren-to-ride-disc-only-merida-road-bikes-in-2020/
    注目すべきは既に9割がディスクブレーキという点です。
    下の記事によると、世界的には自転車の販売の比率はロードバイク:マウテンバイク=4:6とのこと。
    https://www.bike-plus.com/bicycle/goods/sram-is-hot-now-62536.html
    MTBがほぼ全てディスクとして、残り40%中の10%がリム、つまりロードバイクも75%ほどが既にディスクブレーキの販売が占めているということになります。

    海外の話なん関係ないという考えもありますが、ロードバイクブランドはほとんどが欧米と台湾で、市場も欧米が中心です。日本のためだけに開発するとは思えません。
    EUROBIKEでもE-bikeかMTBグラベルの展示が殆どで、スポーツバイク=オフロードと言えるほどです。
    リムブレーキがローエンドのみになるまでに、世界的なロードバイクブームの再来、UCI重量基準撤廃、未舗装路の激減くらい起きないと、流れは変わらないように思えます。

  2. SORA より:

    先のことは誰にもわかりませんよ。
    確かに海外のブランドはレース機材を供給しているので世界の動向と無関係ではないでしょう。
    しかし日本では90%以上がリムブレーキという現状があるのでショップも売れるものを扱いたがります。ハイエンドからは消えてもミドル、エントリーまでなくなることはないでしょう。要は需要があれば残るし、なければ残らないということで、全ては市場が決めることです。
    少なくともシマノがリムブレーキの生産を続ける限り、リムブレーキ車は生き残り続けます。