ロードバイク 自転車

ディスクロードは買いか?

投稿日:2019 年 12 月 30 日 更新日:

ロードバイク界では2019年はディスクブレーキ元年と言われており、ここへ来て各メーカーとも一斉にディスクブレーキ車を出してきました。その背景は海外プロロードレースでのディスクブレーキ解禁と、規格がある程度固まってきたからでしょう。2020年はさらにディスクブレーキ化が加速し、今後リムブレーキ車は生産しないと宣言するメーカーもちらほら出てきています。少なくともハイエンドモデルではディスクブレーキ車しか選択肢がなくなることも時間の問題でしょう。

そのような流れからいずれは全てディスクブレーキに置き換わり、リムブレーキは絶滅するとまで言われています。そうなると今リムブレーキ車に乗っている人は部品の供給を断たれ、自転車本体を買い換えざるを得なくなるわけです。だから今のうちに買い換えておこうと考える人も多いのでしょう。

ただこの動きは業界主導で行われていることを忘れてはなりません。今の自転車業界は圧倒的にグラベルロードとディスクロード推しです。もううんざりするくらいにメーカーもメディアもそればっかり宣伝しています。そこまでする理由は明確で、ロードバイクが売れなくなっているからです。世界的に見てもそうですが、日本では特に顕著です。その原因は弱虫ペダルブームの衰退と消費増税にあります。2010年頃は弱虫ペダルのブームに乗って爆発的にロードバイクが売れましたが、今はその勢いはありません。一度買った人はそう簡単に買い換えませんから、もう市場は飽和しています。それに追い打ちをかけたのが消費増税です。10%も税金を取られるとなると、ロードバイクのような高額商品は絶対売れません。実際、2019年10月以降はロードバイクの売れ行きが激減しています。日本ではもう再浮上の余地はないことは確実です。

業界がそんな苦境にありますから、何とか新機軸を投入して買い換え需要を掘り起こそうと躍起になっているわけです。そこへ白羽の矢が立ったのがグラベルロードとディスクロードです。どちらもディスクブレーキを搭載していることには違いがありません。境界があいまいなところもありますが、大ざっぱに言えばタイヤが太いのがグラベルロードで、細いのがディスクロードということになるでしょう。このうちグラベルロードは以前書きましたように、日本では絶対売れないことが確定です。実際に売れているという話を聞いたことがありません。ほとんどのロード乗りは興味もないようです。

では普通のディスクロードなら売れるのか? それも微妙だと思います。これから買うなら絶対ディスクにした方が良いという意見もありますが、まだ先行きが見通せない中であわててディスクロードに飛び付くのもどうかと思います。明確な理由もなく他人の意見、特に自転車屋のセールストークを過信するのは危険です。

お断りしておきますが、ディスクブレーキを否定するものではありません。もちろん多大なメリットもあり、それが必要な人には恩恵となるでしょう。ただ問題なのは業界主導でディスクブレーキ化が推進されて選択肢がなくなってしまうことです。本来はディスクブレーキとリムブレーキが共存できて、ユーザーが好きな方を選べることが理想的な姿であるべきです。メーカーの一方的な都合で選択肢が排除されてしまうことはユーザーにとって不幸でしかありません。

確かにマウンテンバイクではかなり前からディスクブレーキ化が進行し、すでにVブレーキというのはごく低価格な製品を除いて絶滅しています。でもMTBとロードバイクではちょっと事情が異なると思うのですよ。MTBは基本的に下りしかなく、コントロール性が重視されます。ですからブレーキ性能というものが非常に重要なわけです。圧倒的に軽い力で強力な制動力が得られ、泥詰まりにも強いディスクブレーキには絶対的な優位性があります。でもロードバイクとなるとそこまでの優位性があるでしょうか? メリットがあればデメリットもあるわけで、それを天秤にかけると必ずしも優位とは言えないと思います。

こういう話をするのは自分自身が一度はディスクブレーキを検討したからです。僕の場合は普通のディスクロードじゃなくてグラベルロードでしたが、ディスクブレーキには違いありません。いったんロードバイクを手放してリセットしたため、ディスク移行のチャンスはあったわけです。にもかかわらず、結果的にはあえてリムブレーキ車を選びました。それはメリットとデメリットを考慮した結果、デメリットの方が大きいと判断されたからです。選定の過程でディスクブレーキについてかなり研究しました。古くからのロード乗りはディスクブレーキについてあまり知らない人も多いと思います。そこでディスクブレーキのメリットとデメリットについて、さらに日本では業界が期待するほどディスクロードは普及しないだろうと予想する理由について語ってみます。

ディスクブレーキの種類

ディスクブレーキには大きく分けて油圧式と機械式があります。このうち主流となっているのは油圧式で、機械式は低価格のエントリーモデルくらいにしか使われません。油圧式は自動車やオートバイと同じようにオイルでピストンを押し出すのに対し、機械式は通常のキャリパーブレーキと同じくワイヤーで引っ張る方式です。

ディスクブレーキのメリット

軽いタッチで制動力が得られる

これは油圧式に限られます。機械式だとレバーを引く力そのものはリムブレーキと変わりません。よく誤解されがちですが、ディスクブレーキだからと言ってリムブレーキより強力に効くというわけではありません。シマノも制動力そのものはリムブレーキと同等と言っています。ただ油圧式の場合はパスカルの原理により圧力が増幅されるため、軽い力で大きな制動力が得られるということです。自分は乗ったことないのでわかりませんが、指一本で軽く止まれるらしいです。

雨の日に強い

雨の日にロードバイク乗ったことがある人はわかると思いますが、リムブレーキは決定的に効きません。怖くて下り坂でスピードなんか出せないですね。しかもブレーキシューの減りがものすごく早くなります。一方ディスクブレーキは雨の日でも制動力が落ちないことが最大の特長です。こればっかりはディスクブレーキの圧勝です。雨の日は自転車なんか乗らないよという人は別に関係ないですが、通勤やレースなどで乗らざるを得ない人には大きなメリットになるでしょう。

タイヤの自由度が高い

リムブレーキは構造的にクリアランスがないので28Cが限界となりますが、ディスクブレーキはタイヤの太さから自由なためフレームが許す限り太いタイヤを装着することができます。最近のディスクロードは標準で28Cが付いていることも多いですが、さらに太い32Cなどを履いてグラベルロード風に使うこともできます。

カーボンホイールを安全に使える

カーボンリムは摩擦や熱に弱いため、キャリパーブレーキでは専用のブレーキシューを使わなければなりません。それでもブレーキの使いすぎで過熱すると破損する恐れがあり、使用には慎重さが求められます。ディスクブレーキだとリムとは全く接触しないので過熱の心配がなく、カーボンホイールを安心して使うことができます。

ディスクブレーキのデメリット

重くなる

ディスクブレーキは構造的に部品点数が増えるため、必然的に重くなります。グレードにもよりますが、同じグレードで比較すれば平均でリムブレーキ車より300gは重くなるんじゃないでしょうか? ブレーキ本体だけでなく、フレームやホイールにも剛性を持たせる必要があるため、どうしても重くなってしまいます。将来的に技術の進歩で軽くなる可能性はありますが、それでもリムブレーキより軽くなることは絶対にないでしょう。たかが300gと思われるかもしれませんが、これを他の部分で吸収するには莫大なコストがかかるのですよ。

メンテナンスが面倒

機械式ならリムブレーキと同じようにワイヤー交換だけで済みます。しかし問題は油圧式の場合です。ブレーキオイルが劣化したり気泡が入ることがあるため、1年に1回程度、定期的にオイル交換(ブリーディング)を行わなければなりません。器用な人は自分でやっちゃうみたいですが、特殊な器具を必要とする上、プロでも難しい作業です。ましてや命に関わる部分ですから基本的にはショップに依頼することになります。そうするとランニングコストも結構馬鹿になりません。ショップによっては通販で買ったロードバイクを受け付けてくれないこともあるでしょう。油圧式は何かと厄介です。

トラブルに弱い

リムブレーキは構造が単純なため、何かトラブルが起こっても自分で対処できます。調整も簡単です。たいていは片効きやワイヤーのほつれくらいのものです。しかしディスクブレーキは構造が複雑なため、素人の手に負えません。これは油圧式も機械式も同じ。特に接触などでローターを曲げちゃうとその場では修復不能です。これが旅の途中だったら最悪ですね。

見た目が美しくない

これには異論があるでしょうが、基本的にロードバイクは機能美の極致ですから余計な物を付けると美観が壊れます。ホイールの真ん中にあるローターはどうしても目立ってしまいます。それをカッコイイと思う人もいるのでしょうが、僕には美しくないとしか思えません。もともとロードバイクにはなかったものですから。あとホイールもスポークに大きな負荷かがかかるため、リムブレーキ車のようにスポークを減らすことができず、ラジアル組みにすることもできません。意外と気付かないかもしれませんが、言われてみればそうでしょ? 個人的にはスポーク本数の少ないラジアル組みが最も美しいと思っているので、これは残念です。

ディスクブレーキとスルーアクスルはセット

古くからのロード乗りにはあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、スルーアクスルというのはクイックリリースに代わる新しいホイールの固定方式です。簡単に言えば、中空になったハブ軸に金属のシャフトを貫通させてネジでフレームに固定します。クイックリリースとはフレーム・ホイールともに構造が異なるので全く互換性がありません。利点としてはフレームの剛性が上がること、ローターの位置ズレが起きないことなどが言われています。

数年前まではディスクブレーキ車でもクイックリリースが主流でした。ところが今年あたりからはほとんどがスルーアクスルになり、2020年モデルではエントリーモデルも含めてクイックリリースは絶滅したと言っていいでしょう。

レース目的にはメリットしかないように言われてますが、一般ユーザーにとっては迷惑でしかないですよ。なぜなら現在市販されている自転車用品はクイックリリースを前提としているため、その全てが使えなくなるからです。たとえば輪行用のエンド金具、車載用のキャリア、ディスプレイスタンドなどが含まれます。その全てを買い直さなければならないし、クイックリリースと共用することもできません。ハブ軸に付けるタイプのライトホルダーなんかは構造的に無理ですね。これなどはメーカー主導で選択肢が奪われてしまった悪例と言えるでしょう。

日本ではディスクロードは普及しない?

ディスクブレーキのメリットとデメリットを踏まえた上で、日本ではグラベルロードほどではないにせよ、ディスクロードも業界が期待するほど売れないだろうと予想しています。そう判断する理由は、日本はいろんな意味でガラパゴスだからです。世界で流行っているものが日本で流行るとは限らないし、逆もまたしかり。日本にはディスクロードの普及を阻む二つの大きな特殊事情があります。

日本ではヒルクライムが人気

海外と決定的に異なるのは、日本ではヒルクライムレースが圧倒的に人気だということです。何と言っても国土の4分の3は山地ですから山登りには事欠きません。ヒルクライムはスピードが出ないので比較的安全であり、交通規制もしやすいことから全国各地でヒルクライムレースが頻繁に開催されています。弱虫ペダルブームでもわかるように日本は坂バカ王国です(笑)。

ヒルクライムレースでは基本的に上りしかありません。したがってブレーキをかける必要がそもそもありません。ディスクブレーキはただの重りにしかなりません(笑)。ヒルクライマーは軽量化を何よりも優先しますから、重いディスクロードは敬遠されます。たかが数百グラムの差であってもシビアなレースシーンでは勝敗を分ける可能性があります。ですから最前線で戦っているヒルクライマーほどリムブレーキへ行ってしまいます。実際、乗鞍の映像とか見たらみんなリムブレーキですよね?

輪行に向いていない

自転車を分解して列車に持ち込む輪行というのは日本独自の文化です。海外ではそのまま載せられるのが当たり前なので輪行という習慣はありません。したがって海外メーカーは日本の事情など考えていませんから、輪行をしようとした場合にディスクブレーキは大きな障害になります。輪行は不可能ではありませんが、リムブレーキ車より手間が余計にかかります。これは車載の場合にも当てはまります。つまり旅には向いていないということです。

輪行する際にはただでさえ傷が付かないようにあちこちを保護する必要があります。それに加えてディスクロードだとローターの保護も必要になります。といっても何かできるわけではありませんが、ぶつけないように細心の注意を払わなければなりません。万が一、ローターを曲げちゃうとその場で終了!です。いくら自分が気を付けていても他の乗客がぶつかる可能性もあるでしょう。ましてや飛行機輪行なんて怖くてできないでしょう。

それから油圧式で怖いのはホイールを外した状態でブレーキを握ってはいけないということです。うっかり握ってしまうとピストンが押し出されてホイールが入らなくなってしまいます。マイナスドライバーなどの工具があれば一応戻すことは可能みたいですが、絶対やりそうだから余計な神経は使いたくないですね。そうならないためにはダミーパッドを挟んでおく必要があり、一手間かかります。あと昔よく言われていたのが自転車を倒立させるとオイルに気泡が入ってブレーキが効かなくなるという問題。最近のディスクブレーキは問題ないと言われてますが、それでも完璧ではないのでできるだけ倒立はさせない方が精神衛生上よろしいでしょう。

これにスルーアクスルが加わるとさらに面倒なことになります。まずホイールの着脱がクイックリリースより手間がかかります。車種によっては六角レンチが必要な場合もあります。そして縦置きの場合に必要なエンド金具。当然ながらクイックリリース用のものは使えないのでスルーアクスル専用を用意する必要があります。今のところ選択肢がほぼありません。車載の場合も普通のクイックリリース用キャリアは使えません。スルーアクスル用となると選択肢が限られてしまいます。もちろんクイックリリースと使い回しすることもできません。あと車載の場合に困るのが外した前輪の置き場所です。クイックリリースなら専用のホイールホルダーがあるのですが、スルーアクスル用にはそういうものがありません。ホイールを車内に転がしておくととても邪魔ですよ。

輪行にせよ車載にせよ、ディスクブレーキとスルーアクスルが重なるととても面倒になります。輪行ってたいがい急いでいることが多いので余計な手間はかけたくありません。いろいろ神経を使うことも増えるので、僕はそういうの絶対に嫌ですね。出先でトラブルが起こったときのことも考えると、根本的に旅には向いていません。余計な心配事はできる限り減らしたいものです。もし輪行も車載も一切しないというのであればディスクロードは一考しても良いと思います。

ツーリング目的なら機械式でクイックリリースが最適だが・・

輪行時の面倒な問題を考えると油圧式というのはデメリットしかありません。レースではなく旅が目的なら機械式を選べば比較的デメリットは少ないと言えます。その代わりメリットも一つなくなりますが、雨に強いだけでもツーリングでは威力を発揮します。さらにクイックリリースであればリムブレーキ車とさほど変わらない装備・手順で輪行が可能になります。ただ残念なことに現在では機械式でクイックリリースというのはほとんどありません。自分もこのタイプのグラベルロードを検討していましたが、すでに廃番で入手不能でした。旅には最も適しているのがグラベルロードなのに、輪行向きでないというのは矛盾しています。

数年前まではクイックリリースでリアエンド幅135mmという規格が主流だったのですが、これはあっという間に廃れて現在ではほぼ絶滅しています。今後は対応したホイールも入手困難になることが予想されるため、このタイプのディスクロードはたとえ投げ売りされていても今は手を出さないのが無難です。もう終わった規格ですから、拡張性が全くなくなってしまいます。

結論:ディスクロードは今すぐ買う必要はない

自分はもともとグラベルロードを検討していましたが、ディスクブレーキとスルーアクスルは旅目的にはデメリットの方が大きいと判断し、結局は普通のリムブレーキ車に落ち着きました。めんどくさいことが大嫌いですから、デリケートな油圧式ディスクなんて初めから論外でした。

これからロードバイクを買おうという人も、明確な目的があって今すぐ欲しいというのであればディスクロードを買っていいと思います。待ってる時間の方がもったいないですから。でも積極的な理由がなく、将来的にリムブレーキが絶滅するかも?という不安から買い換えを考えている人はちょっと待った方がいいと思います。

今のところメーカーもメディアもディスク推しのイケイケドンドンで、あと数年でリムブレーキは淘汰されるようなことを言っていますが、僕にはそのように思えません。なぜならそこまでの絶対的な優位性はないからです。たとえば、かつてレコードがCDに置き換わったり、フィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったような絶対的な優位性はディスクブレーキにはありません。むしろメリットとデメリットが同じくらいある状態ではそんなに一気に普及するとは思えないのです。案外、数年後にはディスクブレーキのデメリットが顕在化してリムブレーキに戻ってきそうな気もします。市場の反応が鈍ければメーカーも方針を変更します。

ディスクロードも数年前までは規格が乱立していましたが、現在ではフラットマウント、12mmスルーアクスル、リアエンド幅142mmという方向でほぼ固まっています。だから一気にディスクロードが普及してきたわけですが、まだスルーアクスルやローターの規格にはバラバラなところがあって統一されていない状況です。今後もまだ変わり得る可能性はあるので、すぐに必要がない限りあわてて手を出さない方が良いと思います。あと数年、動向を眺めてからでも遅くはありません。

要は先のことなんて誰にもわからないのですから、将来性を考えてどうこうするのではなく、今欲しい物を買えばいいだけのことです。ディスクロードに魅力を感じているのであればすぐ買えば良いし、リムブレーキの方が良いと思うなら買えるうちに買っておいた方がいいです。今はリムブレーキ車の型落ちが値下げされてかなりお買い得になってますよ(笑)。将来リムブレーキがなくなるからという不安にかられてディスクロードを買うのだけはやめましょう。それは業界の思惑に踊らされているだけです。そういうことは本当にディスクブレーキ車しか選択肢がなくなったときに考えれば良いのです。まあそういう状況はあって欲しくないし、あってはならないと思いますが・・

関連記事

-ロードバイク, 自転車

Copyright© 片雲の風に誘われて , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.