2003.9.16 ツール・ド・愛媛~四国遍路の旅~(2日目)

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自転車

実走日:2003年9月16日(火)
コース:宇和島~務田~則~歯長峠~卯之町=(輪行)=内子~大瀬

 今日が実質上の遍路スタートとなる。今日の予定は宇和島から三間町へ上り、41番・42番を参拝した後、歯長峠を越えて宇和町に至る。そして43番にお参りして卯之町から内子まで輪行する。その後、予約しておいた大瀬の民宿まで残り15kmほどを走って翌日の久万高原アタックに備える。

 宇和島YHを8時過ぎに出発し、国道56号に出る。そしてすぐ昨日も通った国道320号の旧道に入り、JRの東側を通って三間町に至る県道57号に出る。やはりここまで来ると遍路姿の人を見かける。この県道はJR予土線に沿って上っていくが、結構勾配がきつい。昨日の疲れが尾を引いていて脚に堪える。しかも大型車の往来がかなり多く、精神的にも辛い。務田まで約5kmで標高差150mほどを上るが、それにしてはあまりにきつく感じる。自転車には最も嫌な直線状の上りが続く。特に務田に出る手前の窓峠は10%くらいあると思われる直線状の急坂がある。ここで早くもヘロヘロになった。

 務田駅前の信号を左折し、宇和町へ向かう県道31号に入る。やっと交通量が減ってほっとする。少し行くと斜め右に入る道があり、「龍光寺」の小さな看板がある。これを見落とさなければ少し近道になる。看板の通りに行けば自然に龍光寺にたどり着く。ここが初めて自力でたどり着いた札所である。これだけ苦労してたどり着いたのだから、やはり車で回ったときとはお寺に着いたときのありがたさが全然違う。境内にはほとんど人がおらず、静かだった。

41番龍光寺

 ちなみに正式なお参りの作法は本堂にローソクと線香を供え、納め札を箱に入れ、お賽銭をあげてから般若心経、御本尊真言などを唱える。そして大師堂に行って同じことをもう一度繰り返す。読経の仕方も人それぞれで、読経せずに手を合わせるだけの人もいれば、光明真言なども含めて一通り読経する本格的な(?)人もいる。歩き遍路の人は気合いが違うのでたいてい一通り唱えるから長い。それに比べて観光気分の人はほとんど手を合わせるだけ。自分の場合は本堂と大師堂で般若心経だけは必ず唱えることになっている。そして気分によって(?)御本尊真言や「南無大師遍照金剛」を唱えたりする。静かな境内に読経の声だけが響くのは、仏様と一対一で向かい合っているようで何とも清々しい気分になる。軽量化のため経本は持たなかった。さすがに40番まで回ったら暗唱できるようになる。ところがお供えの方は本堂で1回だけに勝手に省略してしまっている。ローソクや線香に火を点けるのが結構面倒だからだ。面倒と言ってはあまりに失礼だが、その分ローソクの重量が2倍になるので1グラムでも軽量化したい自転車遍路にはやむを得ない。お大師様に許してもらうことにする。本来は心を込めてお供えすることに意義があるのだが・・。

 20分ほどでお参りと納経を済ませ、次の札所へ向かう。納経所に次の札所への詳しい道順が貼ってあったので、その通りに進む。次の仏木寺までは3kmほどと近い。再び元の県道に戻ってまっすぐ行くと右手に仏木寺が見えてきた。ここは県道に面しているのですごく楽である。ちょうど観光バスの団体が入ってきたようで、人が多い。こういう時は彼らの習性を見計らってかち合わないようにする。団体で読経している間に一緒に読経する気にはなれないので、本来はいけないのかもしれないが大師堂へ先回りして読経を済ませたりする。団体が読経し終わるのを待っていたら時間がもったいないからだ。

42番仏木寺

 さて仏木寺を打ち終えるといよいよ本日最大の難所・歯長峠にさしかかる。仏木寺から1kmあまりでヘアピンがあり、峠にさしかかったことを実感する。ここからぐねぐねと曲がりながら山腹を上り詰めていくが、意外と勾配はゆるく、それほどきつくは感じない。昨日の水分付近や今日の窓峠のようなダラダラ上りと違って、こういう峠道はずいぶん楽なのだ。カーブで外回りをすれば勾配はずっとゆるくなる。焦ることはないので何度か休憩しながらゆっくりと上っていく。途中に水場があったので喉を潤す。かなり高度を稼いで「吉田町」の標識が現れたのでもう峠に着いたのかと思ったが、そこからまだ1kmほど上りが続いた。ちらっと視界が開けるところがあるが、ずいぶん上ってきていることに驚く。やがて休憩所が現れ、もう峠は近いことを知る。そこから数百メートルで歯長トンネルに到着した。トンネルは1車線幅で狭い。

歯長トンネル

 少し休憩してからトンネルを抜けるとまた休憩所があった。ここから左手に旧来の遍路道が続いている。そして下川の交差点まで一気にダウンヒル。なかなか豪快な下りであった。下川で左折して肱川沿いの県道29号に入る。卯之町までは川沿いの下りだと思っていたのだが、実は川の流れが逆であった。町に向かって少しずつ上っているのだ。ここでも読みが外れてしまった。一気にペースが落ちる。町までは意外と長く、また向かい風に悩まされて遅々として進まない。途中から旧道に入り、43番明石寺へは市街に入ったところで右折し、県立宇和高校の横を通って北上する。看板にしたがって左折し、建設中の高速道路の下をくぐると間もなく門前に着くが、ここからが大変な急坂であり、自転車に乗ったままでは上れない。迷わず押して歩く。わずか400mではあるが、かなり足に来ているのでなかなか辛かった。やっと着いた明石寺は深い森に包まれ、荘厳な雰囲気が漂う立派なお寺だった。ありがたさもひとしおである。

43番明石寺

 また同じ道を戻り、輪行するため国道56号に出て卯之町駅へ向かう。ちょうど13:04の特急が出たばかりだったが、昼食がまだだったので国道沿いのラーメン屋に入る。ここの味噌ラーメンはなかなか旨かった。13:30頃店を出て、卯之町駅で自転車を畳む。タクシーの運チャンとお決まりの会話。そして14:04発の「宇和海14号」で内子まで輪行する。この間は札所がなく、国道を走っても面白くないので時間節約のためにも輪行が効率的だ。自転車は車両の一番後ろの特等席へ。自由席はガラガラ、車内で日記を作成したり特急輪行はなかなか快適だ。14:38に内子到着。特急は速い。

 内子駅にグレ電があったのでリアルタイム日記を更新する。そしていったん国道56号に出て、少し北上してから右折し、国道379号に入る。そして川沿いのゆるやかな上りとなる。それでもかなり足が売り切れているのでペースは遅い。五百木のあたりで若い歩き遍路さんを追い越した。今晩はこの辺の無料宿泊所で泊まるのだろうか? 民宿までは15kmほどで自転車には大したことない距離ではあるが、歩くとなると大変だ。和田トンネルを抜けたところから大瀬地区に入っていく。まだ時間は早いので時々休憩しながらゆっくりと走る。

国道379号大瀬付近

 河口を過ぎると道は1車線になる。それでも時々大型車が通ったりする。民宿までもう少しだが、果たしてすぐわかるだろうか? 住所は小字が路木となっているので、地図によると国道380号との分岐点のすぐ近く、川が最も北側に盛り上がったあたりということになる。やっと路木のバス停が現れたのでどうやら集落に入ったようだ。商店の前で止まり、民宿はどこかなと思って探したが、なかなか見つからない。そして後ろを振り返ったら何とそこが民宿であった。小さな看板はあるが、どう見ても普通の民家なので気付かなかったのだ。午後4時頃到着。翌日に疲れを残さないためには早めの到着が鉄則である。この民宿は『四国遍路ひとり歩き同行二人』にも載っていない穴場であり、自分もインターネットの紀行文で知ったのである。3年ほど前に空き家になった民家を買い取って隣の商店主が始めたらしい。オフシーズンの平日とあって客は自分一人だけ。ここは離れだからオーナーは隣の家に住んでいて、夜は完全に宿泊客だけになる。食堂兼居間には「利用心得」として「宿とは思わないで下さい」と書いてある。基本的にセルフサービスの遍路宿である。その分、宿代は安くなっているのでうれしい。他に客はいないので民家まるごと好き勝手に使って良い。洗濯機も無料で利用できる。夕食は豆腐店を営むご主人の豆腐づくし料理。なかなかヘルシーな食事であった。明日の作戦を練った後、久万高原アタックに備えて早めに就寝する。

民宿来楽苦(きらく)

走行距離 走行時間 平均速度 最高速度 最高地点 最大標高差
48.23km 3:13:40 14.9km/h 49.0km/h 400m
歯長峠
395m

■ノート

卯之町~内子間はJR運賃740円、自由席特急料金510円。

民宿来楽苦(きらく)は1泊2食税込4,700円(夏期)。

片雲の風に誘われて